(前略)
B 話は変わるけど、今回の総裁選では、選挙戦の中盤に差し掛かったところで突然、小泉前首相が安倍支持を明言した。小泉という人は絶好のタイミングを狙って動く。もちろん、最初から安倍優勢だったわけだが、あの発言によって総裁選レースは事実上終わってしまった。そして、安倍政権が小泉路線継承ということも決まった。この一連の動きをどう見るか。
A しかし、最初から安倍の勝利で決まっていたんじゃないの?
B それはそうだ。しかし政治の世界というのは独特だよ。裏切りの連続だ。実際、自民党総裁選の歴史を振り返れば、本命と言われた候補が最後にどんでん返しをくらって負けたりしている。勝ち方も大事だ。かつてのように、総裁選以前に派閥同士の話し合いで決まるというのであれば話は別だが、いまは、そういうこともなくなった。代わりに、総裁選をどう勝つかが大事になってきた。ギリギリの票差じゃなく、圧倒的な勝ち方をしないと政権基盤は危うくなる。
A たしかに、終始黙っていた小泉前首相が安倍支持を明言したのは大きな意味を持つ。あの発言が圧倒的な安倍勝利というストーリーにとって画竜点睛になったのは間違いないと思うよ。
B その直後に、竹中氏は議員辞職を発表している。しかも小泉前首相との会談を繰り返したあとでの発表だ。これをどう思うか。
C つまり、すべてストーリーができていたということ?
B そう。安倍政権が小泉路線を継承するのが明確になれば、安倍政権は竹中氏を無視できなくなる。竹中氏を無視できないのであれば、別に竹中氏は議員を続ける必要はない。むしろ議員を辞めたほうが自由自在だ。自民党内における反竹中陣営による制約も入らない。
A 竹中氏は活動がさらにしやすくなるということか。
B 安倍氏は政権構想で、首相官邸機能の強化を明確に謳った。つまり、内閣よりも参謀本部である官邸を中核に据えた政治運営をしていくということだろう。それが具体的にどのような形になるのかが注目されているわけだが、なんらかの形で竹中氏が官邸に関与していくこともあるのではないか。
C 官邸機能に関与するためには、議員でいる必要はないしね。
A 話はまた変わるけど、首相を退任した小泉氏が新たに事務所を構えるという話がある。
B 事務所は以前からあるだろう。
C いや、事務所といっても小泉氏の場合、議員会館の部屋と地元の神奈川県の後援会だけだ。
A そう。それで日本橋あたりに事務所を新設するかもしれないという話なんだ。その後押しをしているのが日本経団連の御手洗冨士夫会長らで、中曽根康弘元首相がつくった「平和研」のようなシンクタンクになると見る向きもある。
B もし、そんなシンクタンクができたら、安倍政権はその存在を無視できなくなるね。
A できないだろうね。しかも、そこに竹中氏が入ったらどうなると思う? 別に理事長のようなポストに就く必要はない。関与するだけでいいんだから。それにしても小泉事務所は何をするつもりなんだろう。
C 冒頭に出た、安倍政権は短命だという見方についてはどう思う。
A 短命に終わる可能性は否定できないが、むしろ内閣改造が早いタイミングで行われるかもしれないね。今回の組閣は、自民党内の大物たちへの配慮のうえに成り立っている。だから安倍カラーを鮮明化するには、内閣改造が必要になる。さらにいえば、当初の内閣における言動をチェックすることで、安倍路線に賛成なのかどうかという値踏みもできる。
B その内閣改造の段階で、竹中氏が重要閣僚としてカムバックしたりして(笑)。
A 大変な騒ぎになるだろう。しかし、ありえない話ではないよ。
(後略)