記事(一部抜粋):2006年9月掲載

経 済

「りそな」に燻る内紛の火種、またぞろ「旧埼玉」が独立運動

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)A りそなの派閥争いに話を戻すけど、旧埼玉銀行人脈が反・細谷の活動を続けているね。細谷氏の掌握力の弱さも否定できないが、傍でみていても旧埼玉人脈の動きは不快に感じる。
C いまも「埼玉県民銀行」という錦の御旗を掲げ、独立運動を諦めていないようだね。
B 今年の役員人事で、旧埼玉出身の川田憲治氏がりそなホールディングス社長から埼玉りそなの社長に転出した。見方によっては降格人事といえないこともない。その一方で、埼玉りそなからホールディングス役員に異動した旧埼玉の人間が辞任した。「細谷さんにはついていけない」と役員会で発言したらしい。
C よほど埼玉が好きなのだろう。東京に出てきてホームシックになったかな(笑)。
B その辞任劇が起きるや、上田清司・埼玉県知事が記者会見で「りそなはもっと埼玉のことを考えてほしい」と発言したらしい。
A 上田氏は、旧埼玉銀行人脈に支えられて知事に当選した経緯があるから、恩を返したいという気があるんだろう。県民銀行が浮上した数年前にも活発に動いていた。
B あのときは埼玉県の経済界が県民銀行運動を主導したという話だったが、何のことはない。埼玉経済界は、旧埼玉銀行のOBたちが牛耳ってきたという歴史がある。要するに、埼玉県民銀行構想は、埼玉県民のためというより、旧埼玉銀行人脈のための構想でしかないんだ。
A そうした中で、りそなが埼玉りそなを売却するのではないかという見方が流れた。そこで再び、旧埼玉勢が独立運動の機運を盛り上げた。「売られるなら独立だ」というわけだ。
C しかも旧埼玉のエースといわれる川田氏が遠ざけられたことで危機感はなおさら強まった。そこで県知事まで動員して細谷批判をぶちあげたということか。それにしても「あんたら、何やっているの?」という感じだね。
B 旧埼玉陣営が危機感を強めた原因はもう1つある。川田氏の後任として、近畿大阪銀行の社長だった水田廣行氏がホールディングスの社長に就任したことだ。水田氏は辣腕と評価されてきた旧協和銀行のエース。旧埼玉が、あさひ銀行時代から警戒してきた相手だ。
A そのようだね。りそなが実質破綻したとき、細谷氏が会長として乗り込んでくる混乱に乗じて、旧埼玉陣営が水田氏を近畿大阪に追いやる人事の画策をしたという話もある。つまり、それほど警戒していた人物が大阪から東京に舞い戻り、グループを仕切る立場に就いた。これは旧埼玉陣営にとっては一大事だ。人事が明らかになるや、水田氏に何をされるか分からないと恐怖にかられたんじゃないかな。
C 恐怖感が再び独立運動の意識を目覚めさせたということか。だとしたら、やはり顧客無視、埼玉県民無視の県民銀行・独立運動でしかないわけだ。
B 県民銀行になりたいというならば、地銀から都銀へと変わった過去の歴史こそ反省すべきだろう。彼らは上昇志向の果てに、埼玉県と埼玉県民を捨てたんだからね。
C しかも、バブル期には蛇の目事件や県内のゴルフ場開発などで不祥事を連発させ、経営を傾かせた。いまさら県民銀行なんてよく言えたものだよ。
A 埼玉県には、武蔵野銀行という地味だが堅実な地銀がある。上田知事は、県民銀行をそれほどつくりたいのであれば、埼玉県民に尽くしてきた武蔵野銀行をベースに考えるべきだろう。(後略)

 

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