記事(一部抜粋):2006年8月掲載

経 済

ポスト福井に浮上した「塩爺」「竹中」「田中直毅」

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
A たしかに福井問題は不透明なままで、一向に真相が見えてこない。B 福井総裁が国会に提出した資料は理事会限りのマル秘扱いになっている。もっともその一部は流出しているけどね。村上ファンドとの契約書などは既にかなり出回っている。そのうちもっと出てくるだろう。
C 注目されるのは、日銀が株式の買い入れを実施したことと、村上ファンドがやった株買い占めとの関連だ。その資料も国会に提出されているはずだよ。
A 日銀が株式の買い入れを実施したとき、福井氏は富士通総研の理事長だったはず。何が問題なの?
C 日銀が株式を買い入れるタイミングと、村上ファンドが株を買い出すタイミングが微妙に一致しているらしいんだ。念のためにいうと、一致しているというのは銘柄が一致しているという意味だよ。
A それが本当なら、まさに究極のインサイダー取引だ。
B しかも、もしそれに福井総裁が関与していたとすれば、とんでもないスキャンダルだ。国会は資料を極秘扱いせずに、真剣に事実の解明に動くべきだね。
C 実は政府もその点を重視していて、「総裁には任期を全うしてもらいたい」という公式発言とは別なところで、辞任を促しているという話があるんだ。
B もし政府がそうした事実を抑えているのだとしたら、福井総裁は完全にレームダックだ。今回の事件で、福井日銀は政府の圧力に負けるのではないかという推測が飛んでいたが、とりあえずゼロ金利解除に踏み切った。今のところは日銀の独立性を誇示した格好になっているけど……。
C いや、政府はそもそもゼロ金利解除に反対はしていなかった。谷垣禎一財務大臣は解除に慎重な発言をしていたけど、あれは日銀と擦り合わせたうえでのゼスチャーだろう。ゼロ金利解除は政府と日銀の間ですでに決まっていたはずだ。
A だと思うね。政府と日銀は握っていたと思う。この号が出ている頃には、政府は「デフレ脱却」を宣言しているかもしれない。つまり今回のゼロ金利解除は、小泉政権によるデフレ脱却政策が成功裏に終わったことを内外にアピールする格好の手段なのだと思う。そういう意味で、日銀が独自の判断を試されるのはこれからだ。
B そのときにこそ福井問題の影響が問われるというわけだね。
C 結論を急げば、福井総裁はいずれ辞任すると思う。少なくとも政府筋のムードはそうだ。
A 日銀内部でも、水面下でポスト福井の動きが出ている。福井総裁が辞任して、武藤敏郎副総裁が総裁に昇格した場合の副総裁に誰をつけるのかという話だ。
C 複数の名前が取り沙汰されているね。
B しかし、すんなりと武藤氏が昇格できるだろうか。財務省出身の武藤副総裁の総裁就任にはただでさえ批判が出やすいし、当然、難色を示す向きは少なくないだろう。財務省も、こんな微妙な状況で火中の栗を拾うような総裁人事に前向きになるだろうか。むしろ、ひ弱な日銀にプレッシャーをかけ続けるためには、武藤氏を副総裁のまま温存しておいたほうがいい。
A 政府筋から聞こえてくる総裁候補は3人いる。塩爺こと塩川正十郎・元財務大臣、竹中平蔵・総務大臣、そして、経済評論家で郵政民営化委員会の委員長をしている田中直毅氏だ。
B すごいメンバーだね(笑)。何と表現したらいいのか……。
C しかし、ありうる人選だよ。塩川氏は財政が分かっている。今後は財政が最大の問題だからね。竹中氏は日銀の金融政策に注文をつけてきたし、米国ともパイプがある。腹心には高橋洋一補佐官という金融に強い人材がいる。高橋氏は日本では数少ないバーナンキ・米連邦準備制度理事会(FRB)議長の知り合いだ。彼はプリンストン大学に留学中にバーナンキと知り合って、3年前にはバーナンキの著書を翻訳してもいる(『リフレと金融政策』)。田中氏もマクロ経済通として知られる人物だ。
(後略)

 

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