記事(一部抜粋):2006年7月掲載

社会・文化

福井が投資したのは村上ファンドではなく「オリック・ファンド」

「志」と「実利」でつながっていた福井・村上・宮内

 村上ファンドに資産を預けていたことで猛烈なバッシングを受けている福井俊彦日銀総裁。総裁就任時に投資を解約しなかった脇の甘さや、今年2月に事件化を想定していたかのように解約手続きを取ったことに批判が集中しているが、この問題の本質を象徴、今後とも追及されるのが間違いないのは、2001年4月、いったん利益を確定したうえでファンドを乗り換えていることだ。
 富士通総研理事長時代の1999年10月、本人の弁によれば「村上(世彰)氏の志を支援する目的」で、MAC投資事業組合第三号に1000万円を投じたという。そのファンドが、村上被告サイドの事情で02年1月に閉じられた時、福井総裁は242万円で一度、利益を確定、同年4月、元本の1000万円を第1回アクティビスト投資事業組合に預け入れている。
 資金運用の実態を公表した6月20日の記者会見で、福井総裁はファンド乗り換えの理由をこう説明した。
「ファンドの仕組みが切り替わり、端数処理で自動的に受け入れたということだ。主体的に現金化したわけではない」
 村上ファンドのシステムが勝手に変わっただけだといいたいらしいが、その認識は間違っている。アクティビスト投資事業組合はオリックスが業務執行組合員となり、オリックス投資銀行本部が募集を代行するM&Aコンサルティングは投資アドバイザーでありファンドの主体はオリックスにある。つまり、アクティビスト投資事業組合は、運用を村上ファンドに一任する「オリックスファンド」なのである。
(中略)
 それほどたいした運用成績をもつファンドでないことは、福井総裁が明らかにした純利益額と評価益額でわかる。01年から04年までは両方を合わせて10%強。成績の良かったのは05年だけで、60%以上と予想(福井資料には暦年の評価益額は記載されていないので純利益額で推定)される。
 それでも元本1000万円に対して6年で1473万円の利益総額は庶民感覚からすれば凄いものであり、無きに等しい銀行預金との比較において「ボロ儲け」と、マスコミが福井総裁を批判したのも無理はなかった。ただ、ファンド関係者の意見は違う。
「99年の時点で官僚あがりの村上氏に1000万円を投じるのは、極めてリスキーでした。『武士の商法』ではないが、官僚が起業して失敗した例は多く、元本割れする可能性は十分にあった。
 だから福井総裁はリスクを取ってリターンを得ただけなんです。それも05年のパフォーマンスが良くて挽回しただけで、平均利回りは村上氏のあれだけ目立った活躍のわりには低く、逮捕されてしまった村上氏は、『割りの合わないビジネスに手を出してしまった』と思っているのではないでしょうか」(投資ファンドの主宰者)
 しかし、本当にリスキーだったのだろうか。
 これが「村上ファンド」ではなく、「オリックスファンド」ということになれば、風景は変わってくる。実際、アクティビスト投資事業組合の投資家には、オリックスの信用のもとに出資した人が少なくない。(後略)

 

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