経 済
どこが買う「足利銀行」
「りそな」か、「郵政」か【金融ジャーナリスト匿名座談会】
(前略)
A 個別的にみていくと、今がまさに難局を乗り越えるタイミング、という銀行もある。その代表格がりそなグループだ。なにしろ公的資金の完済のメドはまだ立っていないわけだからね。メガバンクに押され、存在感も薄まる一方にみえる。
B りそなは細谷英二会長の下で、経営陣の刷新が進んだといわれている。たしか近畿大阪銀行の社長だった水田廣行氏がりそなホールディングスの社長に就任したが、水田氏は早くから、その手腕が評価されていた人物のようだね。
C 旧あさひ銀行時代からそうだったが、りそな統合の際、あさひの旧埼玉勢力が旧協和出身の水田氏の存在を警戒したんだ。それゆえ近畿大阪の社長というポストに就いていたわけだが、ようやくグループの中枢に戻ってきた。
A 細谷氏としては、りそな立て直しの失敗が許されない最終局面で、ついに水田氏の起用に踏み切ったということだろう。今後、近畿大阪、埼玉りそなというグループ企業の再編成といった大掛かりなアプローチが出てくるかもしれない。
B 旧埼玉勢が古巣の埼玉りそなに集まったから、再び「独立運動」が始まるかもしれないしね。
C 考えられるシナリオは、近畿大阪と埼玉りそなの再上場と切り離しだ。つまり両行を売却することによって、公的資金の返済原資をりそなは確保する。
A それは十分ありえる話だね。そのくらいの抜本策が出てもおかしくない。ところで、そのりそなグループだが、足利銀行の関連でも話題になっているね。受け皿の有力候補として。
C 確かにその絡みで、りそなの名前はよく聞く。経営破綻した足利銀行は、ようやく再建が出口に近づき、この夏場にもエクジットを迎える見通しだ。果たしてどこが受け皿になるのか。夏場に向けたビッグイシューと言っていいだろう。(中略)C となると、隣県の埼玉りそなを擁するりそなグループがやはり出てくるということか。
A それはどうかな。りそなは、オリックス、野村プリンシパルと組んでいると聞いているけど、いまオリックスには逆風が吹きまくっている。村上ファンドとの密接な関係が取り沙汰されて、政治的にも拒絶感が高まっているし。
B オリックス会長の宮内義彦氏が規制改革委員会のトップを務める一方で、規制緩和ビジネスでオリックスが大幅にビジネスを拡大してきたことも問題視されている。オリックスが加わる限り、りそなの可能性は低いのではないか。
C みずほ証券の関連会社である投資ファンド、ポラリス社が動いているという話もある。三菱系地銀が占めている北関東に楔を打ちたいという発想が、みずほグループにあってもおかしくない。ただ、ポラリス社の規模からいって、単独で足利買収に動くことは無理だろう。どこかと組むしか道はない。それを実現できるかどうかだ。
B 三菱東京UFJの動きは?
A 今のところは影も形もみえてこない。おそらく静観ということではないか。少なくとも、メガバンクが直接に足利銀行の子会社化に動くというタイミングは、とうに過ぎ去ったといえる。三菱東京UFJは動かないと思うよ。
C それなら、三井住友はどうだろう。西川善文・前頭取が足利銀行を訪問していたことが一時期話題になったし、盟友のゴールドマン・サックスも足利銀行に接近していた。
A 現在の三井住友自体はそれほど意欲的ではない。三井住友はいま内部固め優先だし、そうあるべきだろうと思う。
B 日興コーディアルグループの名前も聞こえていたが。
A 難しいだろうね。日興コーディアルは一時、東京スター銀行にちょっかいを出した。それで評判がすこぶる悪い。ミソをつけてしまった感じだね。
C そもそも外資系は難しいだろう。金融庁の外資嫌いは今も続いている。
B じゃあ、どこが足利買収に成功するのさ。
A 真夏のミステリーかもしれないよ(笑)。意外なところが出てくる可能性が高いというのは確かだね。
B ずいぶん、もったいぶってるね。意外なところって、たとえば日本郵政とか?(後略)