記事(一部抜粋):2006年7月掲載

経 済

三重苦「ソフトバンク」の瀬戸際

【情報源】

(前略)村上ファンドの村上世彰前代表が東京地検特捜部に逮捕された6月5日、株式市場にはもう1人の有名ファンドマネージャーの逮捕説が流れた。昨年の長者番付で「100億円部長」として話題になったタワー投資顧問の清原達郎氏だ。この逮捕説、結局ガセで終わるのだが、捜査当局が「バブルの後始末」に乗り出している状況では、そうした疑心が生まれるのも無理はない。市場では「次は楽天か、USENか」といった憶測がしきりだ。
 今回の村上逮捕で「ライブドアをめぐる一連の捜査は一区切りついた」(司法記者)とされるが、9月以降の秋の陣でバブル潰しの第2ステージが始まる可能性は否定できない。清原氏については「金融庁やSECが関心をもって情報収集に動いている」(投資顧問関係者)ようで、日本振興銀行の木村剛氏についても「親密だった竹中平蔵・総務相の存在感が急速に薄れたことで、金融庁が再び調査に乗り出す気配がある」(事情通)という。
 実際、当局の締めつけは厳しさを増している。アイフル、三井住友銀行、中央青山監査法人と、金融庁が立て続けに業務停止命令を出し、市場では「第2のアイフル」摘発の噂が絶えない。同庁はさらに不動産投信、投資法人へのヒアリングも開始。「アングラマネーの温床といわれる私募不動産ファンドの実態解明を視野に入れている」(金融庁関係者)という。
 先の国会で成立した「金融商品取引法」にも、TOBやファンドに対する規制強化などが盛り込まれ、警察当局もアングラ勢力が絡む不動産、株取引に厳しく目を光らせる。こうしたバブル規制によって、今後どんな事件やスキャンダルが飛び出すか。
 1兆7500億円という前代未聞の金額で英ボーダフォン日本法人を買収したソフトバンク。2006年3月期連結決算は5年ぶりの黒字で、売上高も初めて1兆円の大台を突破。ボーダフォン買収が反映される今期は2兆円に乗るのが確実だ。一方で「ソフトバンクは本当に大丈夫なのか」という声が日増しに強まっている。新興市場低迷による株安、ボーダフォン買収による過剰債務、それに伴う金利負担増の三重苦が同社に重くのしかかっているからだ。
 連結ベースの有利子負債は、ボーダフォン買収で8500億円から一気に2兆円台に跳ね上がり、株主資本比率は1ケタ台と財務体質が著しく悪化。S&Pの格付けは六段階ダウンし、社債も額面割れに追い込まれている。しかもボーダフォン(ソフトバンクモバイルに社名変更)のシェアは17%と、先行するNTTドコモ、KDDI(au)に大きく差をつけられたまま。11月に番号ポータビリティ制度(電話番号を変えずに他社と契約できる)がスタートすると、さらなる苦戦は必至で、それまでに戦略的な機能と料金プランを打ち出せるかが焦点となる。
 今回の買収にあたっては、買収先企業の資産や将来利益を担保に資金を借り入れるLBOによって、ソフトバンクモバイル自身が1兆3000億円を調達している。いわゆるノンリコースローンといわれるものだ。ソフトバンク本体に返済義務はないものの、融資条件の財務制限条項に抵触すれば一括返済を要請される恐れがある。(後略)

 

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