経 済
業界からもつまはじき
アイフルの傲慢経営【金融ジャーナリスト匿名座談会】
A ゴールデンウィークの前後に慌ただしくなると予想していた案件のうち、1つが片付いた。大手消費者金融会社のアイフルに対する行政処分だ。残る1つは、三井住友銀行の独禁法違反に関する行政処分。連休直前に金融庁が発表なんてことになると、取材に追われてゴールデンウィークが台無しになってしまうかもしれない(笑)。
B それにしても、アイフルへの行政処分はタイミングが遅かったんじゃない? 去年の暮れごろから「アイフルに相当厳しい行政処分が下る」という話で消費者金融業界は持ち切りだった。
A 検査は昨年の六月に始まって10月には終わっていた。検査終了後、金融庁とアイフルとの間でやり取りがあったとしても、去年のうちにすべて終わっていたはずだ。そう考えると、行政処分は異様に遅かった。まさか新年度まで持ち越されるとは思わなかったよ。
C よく分からないけど、アイフルがゴネたのではないのか。武富士といい、SFCGといい、違法行為などの問題がおきて、財務局が摘発にかかろうとすると、弁護団をフル出動させて役所に挑戦的になる。アイフルの体質は武富士やSFCGに似ているから。
B しかし金融庁の説明を聞く限り、アイフルがゴネたという雰囲気は感じられない。最近、財務局は、地銀などの検査を金融庁に奪われて、消費者金融会社に対する検査に意欲的になっている。アイフルもガツンとやられたにちがいない。
C それにしてもアイフルの違法行為は悪質だね。いろいろと事情はあるようだが、債務者の同意を得ずに、債務者からの委任状を勝手に作成して、所得証明書など公的証明書類を取得するなんて、とんでもない違法行為だ。しかも4月14日のお詫び会見では、福田吉孝社長と同席した法務担当の羽島伸太郎常務が「委任状を代筆した」などと説明していた。「代筆」ではないだろう。正確には「偽造」だ。私文書だか公文書だかは分からないが、要するに偽造罪の範疇に入る犯罪行為だ。違法行為をしでかした社員はもとより、「代筆」などというとんちんかんな言葉を使う経営陣の神経が疑われるね。
A 本当に反省しているのかな。福田吉孝社長は「猛省」という言葉を使ったようだけど。Cさんは会見に出たんだろ?
C 確かに「猛省」と言っていた。しかし記者会見の雰囲気をみると、明らかに準備不足という感じだった。記者たちに具体的なことを質問されても、持参した資料をめくり続けて、どこに書いてあるのか分からないという有り様だった。違法な督促電話を何回やったのかも頭に入っていなかった。それを資料で調べている最中、福田社長は「間違ってはいけないので正確を期すために確認している」と説明したが、五件の違法行為の詳細が頭に入っていないということ自体、何か真剣味に欠けているという印象を抱かせたね。社長と常務の間で数字が食い違っていたし。
B 危機感が足りないのだろう。アイフルの現状と今後は厳しいと思うがね。
A 近畿大阪、りそな、埼玉りそな、南都、紀陽、和歌山、関西アーバン、びわこなど、ローン保証提携をアイフルと結んでいる銀行が次々と提携商品の販売を見合わせたり、中止したりしている。当然といえば当然のことだ。自分の銀行の顧客にローンを売ったはいいが、何か問題が生じた場合には取り立てをアイフルが行う。そこで悪質な取り立てをやられたら、販売した銀行のレピュテーションリスクという問題に発展しかねない。別に、ローン保証提携はアイフルだけがやっているわけではないから、同様の商品を売るにしても、アイフルとの提携は解消して、別の消費者金融会社と提携し直せばいい。おそらく、そういう動きがこれから拡大していくだろうね。
B 消費者金融会社にとってのローン保証提携のメリットは、保証手数料が入るだけではない。提携関係を築くことによって、消費者金融会社は相手先の銀行からの融資も期待できる。いまは銀行が貸し出し難で、どんどん貸してくれるけど、消費者金融会社の経営事情が変わったり、あるいは銀行の事情が変われば、消費者金融会社の資金調達パイプが細ることもあり得る。そのときに提携関係があるかどうかは大きな違いだ。アイフルは、そういう危機意識をもっているのだろうか。
C メインバンクの住友信託には事前に、今回の行政処分について説明していたようだが、他の提携金融機関には行政処分発表後も数日は説明していなかった。「いつ説明にくるのか」と不快感を露にしていた銀行もある。心証を害したことはまちがいない。
B 福田社長を筆頭にして、銀行を甘く見てきたからね。アコム、プロミスがメガバンクと本格提携したときも、「ウチはむしろ銀行を買収する」と福田社長は豪語していた。東京スター銀行を買収するかどうかというときにも、福田社長は「もっと大きい銀行を」と東京スター構想を一蹴している。明らかに過信があったね。
A 福田社長は一代でアイフルをここまで育て上げた人物。その手腕はなかなかのものだろう。しかし、いつからか自信過剰になっていたと思う。その原因の一つは取り巻きの悪さだ。能力のある者より、ゴマすりを周囲に置くようになったというのが社内ではもっぱらだ。自分では気づいていないのだろう。
B 行政処分が不可避という厳しい情勢のなかで、財務担当などの専務2人を退職させるが、1人残った専務は福田社長の同級生。福田社長に反対などしたことがない。常務以下もしかりだ。この人事を決定したのはもちろん福田社長だが、このことから透けてみえるように、福田社長は現状に対する危機感が乏しいのかもしれない。
A 財務担当の堀場勝英専務は、ダイエーの財務を仕切って、アイフルに転じた。アイフルがかつてサラ金問題の渦中に資金繰りに窮したとき、いろいろと福田社長の相談にも乗った人物だ。その経歴から分かるように、堀場氏は金融業界に顔が広い。万が一、資金調達問題にまで発展するようなことがあれば、この人物がいるといないとでは大きな違いだ。しかし堀場氏は定年ということで退職する。この人事を決定したのは、すでに行政処分が不可避という局面だった。本人が辞めたいと言っても慰留して続投してもらうような状況なのに、ちょっと考えにくい出来事だ。(後略)