記事(一部抜粋):2006年5月掲載

政 治

小沢一郎「政権への妄執」

反小泉大結集の致命的欠陥【永田町25時】

 民主党代表に就任した小沢一郎が「変身」を宣言した。かつての傲岸不遜、周辺を見下す態度を変え、低姿勢、協調路線で行くという。本当かと誰もが疑う。だが、小沢の行動をみていると、まんざら嘘でもない。
 代表選の後、小沢は議員会館の同党所属議員すべての部屋を2時間半かけて回った。新進党の党首になったときも同じことをしたが、政策冊子を持って笑顔をつくる姿は確かに以前とは違う。続けて民主党の最大支持団体である連合、さらに日本遺族会、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会などを次々と訪問した。いずれも自民党の支持団体だ。
 とどめは4月11日の東京・信濃町の創価学会本部。電話でアポをとり、会長の秋谷栄之助、副会長の正木正明と会談した。小沢は13年前、公明党と連立を組んで細川政権を樹立した。秋谷、正木とは旧知だ。
 その直後、幹事長に留任した鳩山由紀夫がCS放送のテレビ番組で自民非主流派との連立に言及した。ポスト小泉の自民党総裁選で官房長官の安倍晋三が勝った場合、敗れた側と「保守中道政権を目指しての連携」があり得るというのだ。すなわち福田康夫もしくは財務相の谷垣禎一が支持勢力とともに「自民党を飛び出し、(首班指名選挙で)小沢に投票する」というのである。
 鳩山発言のポイントは「保守中道政権」にある。9月の総裁選に向け、自民党内は小泉改革を継承し中国や北朝鮮に強硬路線で臨もうとする最有力の安倍に対し、反小泉勢力が結集して対抗する構図が固まりつつある。改革の行き過ぎにストップをかけ、対中国外交を融和路線に戻す名目で反小泉勢力と連携する、それが小沢や鳩山の連立政権構想だ。小沢が小泉改革に反発する医師会や中国外交に不満をもつ創価学会をいち早く訪ねたのは、そうした背景がある。
 首相の小泉純一郎は小沢の動きを見て「おれが首相を降りたら小沢は旧社会党系を切り捨て、政界再編を仕掛けてくるぞ」と警告を発した。4月12日には記者団に「小沢さんは自民党にいたら首相になれないから自民党を出た。首相になれないのに民主党にとどまるはずがない。自民党(と民主党)を割ることで連立政権を仕掛けてくる」と解説した。
 ただ、小泉の警告は党内の反小泉勢力への牽制レベルで、かならずしも深刻とは思えない。たしかに理屈のうえでは小沢や鳩山の連立構想は可能性がある。仮に安倍と福田が総裁を争い、議員支持数の多いはずの福田が党員投票で差をつけられ僅差で負けた場合に、民主党(もしくは党分裂後の小沢支持勢力)と連携すれば政権は奪える。しかし、現実にはそうした事態はないと、小泉を含め自民党ベテラン議員のほぼ全員は確信している。小沢自身に致命的な欠陥があるからだ。(後略)

 

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