(前略)
A それはともかく、ライブドアの強制捜査には、武富士の買収話が絡んでいるとの噂もある。
B 武富士がライブドアを買収するという噂は聞いたことがある。
C それは逆、ライブドアが武富士を買収するという話じゃないの。
A その通り。本欄でも「小泉政権のバックは三菱・トヨタ連合で、その陣営にオリックス、村上ファンド、ソフトバンク、楽天、ライブドアがいる」と言い続けてきた。なんでも、買収話には尾ヒレが付いていて「自民党の議員が仲介する形で武富士の株(武井一族が所有する株式)をライブドアがいったん3000億円で買い、その後、5000億円で東京三菱銀行に転売することに堀江が合意していた。ところが欲が出た堀江がその条件を渋りだしたため、政府主導で強制捜査をさせた」という話になっている。
C 本当の話かどうかはわからないけど、それなら国策捜査も合点がいく。
B もしその話が本当だとすると、堀江は完全にアウトだね。むしろ、堀江1人に責任をなすりつける可能性が高い。
A 案外、株主総会で見せた涙はウソではなかったのかも知れない。いつも高い買い物ばかりさせられていたから、株主のためにももう少し利ザヤを稼ぎたかったのかも知れない。
C もともと堀江は広告塔で本当の実力者は最高財務責任者の宮内亮治だといわれていた。だから宮内のインタビューが載っている雑誌などを読むと、半ば宮内が堀江を小馬鹿にしているのがよくわかる。
B いずれにしても当局は風説の流布と偽計取引で起訴する構えだけど、これってちょっと無理がないだろうか。今回の摘発の入り口はこういうものだった。「ライブドア(LD)が出資している投資事業組合が先にマネーライフ社を買収し、その後でライブドアマーケティング(LDM)がマネーライフ社を完全子会社化するとして株式交換を実施。この間、LDMは株式100分割を行い株価は急騰、LDMの新株を受け取った投資組合はLDM株を売り抜け、売却益をLD本体に環流させた」というもの。だが、そもそも投資事業組合に何%出資していたら「支配下」と認定されるんだろうか。支配下を認定する基準が曖昧すぎるんだね。
C 本欄でもライブドアの手法に対してずっと警鐘を鳴らしてきた。だから、投資事業組合や私募CB(MSCB)、さらには100分割などの大幅分割には何らかの規制をすべきだったんだ。ところが、金融庁や東証は何もしてこなかった。そういう点では、金融庁と東証の責任は大きいといえる。
A 堀江が言っていたように、彼らの手口は法の抜け穴を狙ったものだった。だから厳密にはグレーであるものの、黒ではない。そう認識していたはずだ。現法では投資事業組合は秘匿性が高く、公開の義務もない。法を拡大解釈してライブドアの手法をアウトとすれば、他のファンドに激震が走るだろう。
B 当局としては、一罰百戒が目的なんじゃないの?
C 法を拡大解釈してまでライブドアをやるんだったら「天網恢恢、疎にして漏らさず」でなければ意味がない。それでなければ、第2、第3のライブドアが再びマーケットを食い物にするだろう。
A なおのこと、国策捜査の疑いを持たれるだろう。だから、やるなら徹底的に他もやるべきだ。
A ところで、武富士が絡んでいるとすると相当根が深そうだ。80年代後半のバブル時、武富士の京都駅前の地上げまで遡らなければならない。
B 京都駅前の地上げ?
C 武富士がある団体を使って虫食い状態の地区を地上げした件でしょ。その利権争いが山口組若頭暗殺につながったと言われている。
A 問題は地上げの仲介で得た団体の資金何百億円が某メガバンクから忽然と消えたとされること。
B そういえば、そのようなことを書いた本が書店で売られていたね。
A その本には「東京三菱銀行」って書いてある。どういうわけか、ライブドアの武富士買収説とキャストが重なってくる。ここからは想像だけど、その消えた資金がライブドア絡みの投資事業組合に流れていたんじゃないのか。その窓口がエイチ・エス証券副社長の野口英昭だった可能性がある。それにしても『サンデープロジェクト』(1月29日放送)が、この野口の自殺疑惑について、「突破者」こと宮崎学にコメントさせていたのには驚いた。(後略)