経 済
「国際協力銀行を死守せよ」
「改革」に抵抗する財務官僚【金融ジャーナリスト匿名座談会】
C ところで、そんな民間銀行が融資できないような分野に資金を供給してきたのが、いわずと知れた政府系金融機関。郵政民営化を実現した小泉政権は、今度はいよいよ政府系金融機関の改革に乗り出すというわけだ。
B 郵政民営化は旧郵政省、いまの総務省の旧郵政部門にとっては大問題だったけど、他の省庁には対岸の火事のようなものだった。郵政公社が膨大な額の国債を保有しているという一点で利害先だった財務省にしても、民営化される公社に、保有国債を売却しないという枠をはめることに成功した時点で、あとはどうなろうが関係ないことだった。しかし、政府系金融機関の改革となると話は違ってくる。財務省、経済産業省、農水省、総務省、外務省のそれぞれに深く関係しているからだ。
C 政府系金融機関は有力OBの重要な天下り先、なんだかんだと権限を行使できる既得権益先だからね。
B その通り。だから郵政民営化には馬耳東風だった財務官僚たちも目の色を変えた。上層部は本業そっちのけで対応策に追われてきた。
C たしかに政府系金融機関のトップのほとんどは事務次官経験者だ。そのポストが奪われるということになれば、現在の上層部は、怒り狂った有力OBたちから、おまえはダメだと失格のレッテルを張られかねない。(中略)
B そうした中で、今や国際協力銀行総裁が財務省では最高の天下りポストになっている。それだけに財務省は、国際協力銀行の民営化や組織改編、要するに改革のターゲットに据えることをどうしても回避したかった。
C 国際協力銀行の上層部ポストはおいしいらしいよ。世界各国に援助資金を供与しているので、外国に行くと国賓並みの待遇を受けられる。
A そうらしいね。知り合いの国会議員が言っていたけど、ある国で国際会議があって、日本の国会議員たちが大勢で訪れた際、空港からの送り迎えはマイクロバスで、国会議員もそこに押し込まれたそうだ。ところが、同じ国際会議に出席する国際協力銀行の幹部たちには空港までリムジンが迎えにきた。国際協力銀行の関係者も言っていたけど、リムジンでパトカーの先導がつくらしい。道路も一般車両がストップさせられるというから、まさに国賓待遇だ。
B ところが外国でのことだからか、日本ではそうした話はほとんど話題にならない。
A そういえば、ある国会議員が言っていた。1回でもパトカー先導で道路を独占してしまうと、「この仕事は辞められないな」と思うそうだ。究極の権力体験だものね。
B その体験を、国際協力銀行に天下った官僚OBたちは外国へ行くたびに満喫しているわけだ。やっぱり「辞められない」と思うんだろうね。
A 自分のカネで援助しているなら話は別だが、外国への援助資金は彼らが出してるわけではない。日本国民の税金だ。そう考えると、どうにも腹立たしい。
C 官僚の既得権益は年々減ってきているが、その中でお目こぼしというか、隠れて既得権に浴することができるのが外国で、その恩恵をフルに享受しているのが国際協力銀行だった。財務省の官僚たちが国際協力銀行の死守に必死になる背景が所詮そんなものだとしたら、まったく情けない話だよ。
B 話を元に戻すけど、そんな財務省の官僚たちにとって、今回はせっかくの竹中外しもアテが外れたという感じだね。
A 諮問会議は骨抜きにできたが、自民党を牛耳った小泉・中川秀直政調会長ラインが脱・官僚だからね。頼みの綱だった谷垣禎一財務大臣や与謝野の立場も所詮弱いし。(後略)