記事(一部抜粋):2005年12月掲載

政 治

後継者の条件は「対米協調」

小泉が安倍と麻生を推す真意【永田町25時】

 (前略)内閣改造後、中曽根だけでなく自民党の大方が、小泉は安倍を後継に想定していると見始めた。小泉は11月の韓国釜山で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に出かけるにあたり、先輩閣僚の麻生太郎外相や谷垣禎一財務相をさしおいて安倍を首相臨時代理に指名した。誰がみても後継は安倍というイメージを強めようとしている。
 安倍の官房長官については、ライバルの自民党幹部だけでなく秘書官の飯島勲ら小泉周辺にも異論があった。官房長官は内閣の要であると同時に首相の代理を務めるスポークスマン。小泉と改革路線も外交政策も一体でなければ勤まらない。ところが安倍は小泉の「自民党をぶっ壊す」という過激改革路線に一致しておらず、郵政民営化法案に反対した親しい議員を庇うなど「情に動かされる」(周辺)甘い気質も明らかになった。
 ところが小泉はそうした周辺の声を無視した。その理由について小泉周辺は「安倍が一番コントロールしやすいからだ」と説明する。国民人気が高い点も改革推進の跡継ぎとして適任というのだ。
 ただ、もう一つ別の解説があり、その方がむしろ説得力がある。
「小泉が後継問題で再重視しているのは、実は対米協調最優先の外交路線」(小泉側近)というものだ。だから米国重視の麻生を外相にし、同じ姿勢の安倍を官房長官にした。小泉が来年9月に退陣した後も米国では盟友のブッシュ政権が続いている。「小泉改革は国民の圧倒的な支持があり後戻りはあり得ないが、外交路線は首相が変わると危ない」と警戒している。ブッシュへの義理を重視しているというのだ。
 11月9日、靖国神社の代替施設建設を目指す超党派の議員連盟の設立総会が開かれ、自民、公明、民主3党の130人が参加した。代替施設建設の主な目的は小泉の靖国参拝を攻撃する中国や韓国との友好だ。民主党が「改革を競う」と言い出した中で、今後の日本政治を二分する大きな流れは「対米協調」か「親中国」かの選択だという指摘がある。公明党を含む超党派の議員連盟は、小泉が退陣すればますます膨れ上がりかねない。
 次期首相候補の1人といわれた福田康夫が無役とされたのも、国内の盟友だったはずの山崎拓が入閣できず山崎派が冷遇されたのも、靖国代替施設建設の動きの中心人物であるためというのはほぼ間違いない。(後略)

 

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