「細木某とかいう女占い師に聞くしかないね」
ポスト小泉の五番手といわれる自民党政調会長・与謝野馨は記者に11月2日の内閣改造・党人事を聞かれると決まってこう惚ける。小泉以前の自民党では、事前に首相官邸から各派閥に入閣候補の打診があるのが慣例だった。だが小泉は周辺にすらまったく人事構想を漏らさない。官邸で入閣名簿が読み上げられるまで、小泉以外の誰にも分からないというのが与謝野の言い分だ。
ただ、そうはいっても自民党幹部はそれぞれ情勢を読み、小泉の胸のうちを推測する。今回の改造・党人事は来年9月のポスト小泉選考に直結し、幹部それぞれの政治生命がかかっているのであれば当然のことだ。
与謝野は自分が改革を推進させる政策通として小泉に高く評価されていると自負している。政調会長として郵政民営化法案の成立を表と裏の両方で仕切ってきた。だから改革関連の重要閣僚で処遇されると確信する。具体的には総務相か財務相。そうなれば、活躍次第でポスト小泉の争いで五番目からトップに浮上するのも可能という読みだ。
与謝野がポスト小泉を本気で睨みだしたのは、政界の裏のドンを気取る読売新聞会長の渡辺恒雄が推していることばかりが理由ではない。ここへきて、トップを走っている安倍晋三が失速することが確実とみたからだ。相手が若い安倍でなく麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫の三人なら、能力で十分勝算はある。
世論調査では小泉に次ぐ人気で、福田赳夫から安倍晋太郎に引き継がれた「清和会」で小泉の後輩として育った安倍が、ポスト小泉レースの本命であることは内閣改造前の時点では変わっていない。小泉が自分の番頭であり国民に向けての代理人となる官房長官の椅子に安倍を座らせれば、安倍はそのまま来年9月に向けて独走状態となるだろう。しかし安倍を取り巻く環境は厳しい。
「安倍は本当は守旧派体質だ」という声が官邸や自民党内で囁かれている。理由は先の選挙で郵政民営化法案に反対票を投じた古屋圭司(岐阜5区、当選)や城内実(静岡7区、落選)らを密かに応援したほか、取り巻きに反対派の急先鋒、荒井広幸らがいるためだ。選挙応援については、安倍が「刺客」派遣に消極的だったこともあって首相秘書官の飯島勲が怒り心頭、小泉も快く思っておらず、自民党幹部から一時は「処分すべきだ」という声もあがった。(後略)