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詐欺集団といえば、都心の超一等地、しかも有名なオフィスビルを舞台にした奇妙な動きがある。
最近、都心の有名ビルのワンフロアを借り切り、それを分割して中小の事業者などにレンタルするビジネスが台頭している。こうしたレンタル業者は、事務所スペースを又貸しするだけでなく、「バーチャルオフィス」と呼ばれる、電話受付や転送などのサービス業務も手がけている。これを利用すれば、実際にオフィススペースを借りていなくても、少額の出費で、そのビルに本社があるという体裁を整えることができるわけだ。
本社を置くオフィスビルが一流であればあるほど、取引先や顧客の信用は得やすい。そこに目をつけた詐欺集団がいま、都心の有名ビルで跋扈しているというのだ。
そしていま、関係者の間で密かに話題になっているのが、レンタルオフィスを多数手がけるS社だ。同社は世界160都市で事業展開し、日本法人は都内の恵比寿ガーデンプレイスタワー、東京サンケイビル、品川インターシティ、丸の内AIGビルなど13カ所にレンタル物件を所有している。
同社のメインユーザーはベンチャー企業、金融などの外資系企業だが、実はその中に相当数、怪しげな企業が紛れ込んでいる。もちろんS社が、それら企業と結託しているわけではないのだろうが、「大半が短期間の契約、しかも前金制なので、契約先の事前調査はほとんどなされていないのが実情」(業界関係者)という。しかもS社がレンタルするビルの受付は異常ともいえるほどガードが固いとあって、外部からはまるでブラックボックス。これでは詐欺集団の思うつぼだろう。
たとえばS社が保有する某有名ビルの9階には、外資・国内の投資会社やベンチャー企業に紛れて、業種も実体も不明の会社がなんと数十社も本店登記している。(後略)