記事(一部抜粋):2005年9月掲載

経 済

高橋治則とジェイ・ブリッジ

【情報源】

(前略)
 7月18日に急逝したバブルの寵児・高橋治則氏。「南海のリゾート王」として一世を風靡し、リゾート会社のイ・アイ・イ‐インターナショナルを中核として、旧長銀との二人三脚で国内のみならずハワイ、グアム、オーストラリアなどのホテル、ゴルフ場を買いあさった。絶頂期の資産は一兆円ともいわれる。
 しかし、1995年の東京協和・安全2信組事件で逮捕・起訴され、その後、長銀が一時国有化、イ・アイ・イも破産し、高橋氏はいったん表舞台から姿を消す。そして再び始動したのが3年ほど前。水面下で株式投資、M&A事業に乗り出した。その資金規模は1000億円ともいわれ、株式投資のキャピタルゲインを元手に国内のゴルフ場を買収、さらには以前保有していたグアムの「ハイアット・リージェンシー」を買い戻すなど、まさにバブル期を彷彿とさせる復活を遂げつつあった。
 亡くなる直前には新たな証券会社を立ち上げ、そこには大蔵省の接待疑惑で槍玉にあがり、高橋氏と親交の深かった田谷広明・元東京税関長も名を連ねていたという。
 高橋氏が手掛けた企業は「高橋銘柄」として相次いで急騰、その数はおよそ20にのぼったという。その代表的な銘柄こそ、前号の本欄で取り上げた企業再生ファンドのジェイ・ブリッジだ。同社が手掛けたユニオンホールディングス、オメガ・プロジェクト、ファイ(旧日本アイ・エム・シー)などは、「高橋氏が実質の出資者であるとともに、指南役でもあった」(事情通)という。
 実際、高橋氏と企業投資ファンドの風雲児ジェイ・ブリッジの関係を裏付けるように、ユニオンホールディングスが第三者割当増資を引き受けて傘下に収めたJASDAQ上場の都築通信技術は、高橋氏の懐刀だった河西宏和氏(元イ・アイ・イ会長)が会長に就いている。
 高橋氏亡き後、同氏が運用してきた巨額資産の行方はどうなるのか。昨今の「企業再生バブル」を演出してきた陰の主役の1人だっただけに、その影響は小さくない。
 利ザヤ確保のため消費者金融にこぞって参入した大手銀行が、最近血道をあげているのが中小企業向けの無担保自動審査型融資、いわゆるスモールビジネスローンである。三井住友の「ビジネスセレクトローン」、UFJの「UFJビジネスローン」、みずほの「アドバンスパートナー」、東京三菱の「融活力」などで、いまや地銀も信金もこのスモールビジネスローンに走っている。
 ところが案の定、詐欺まがいの融資引き出しが横行してきた。過去2、3期分の決算書と納税証明書、商業登記簿謄本さえあれば、営業実態の現地確認なしで審査はパス。「抜け道が多く、その気になれば上限5000万円の融資を難なく引き出せる」(中小企業経営者)という。すでに捜査当局が大がかりな詐欺グループを摘発しているが、これとて氷山の一角。ある銀行関係者によると「融資審査に時間がかかっても、文句ひとつ言わずにひたすら待つ客は、詐欺の可能性が高い」という。(後略)

 

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