記事(一部抜粋):2005年8月掲載

政 治

「郵政法案」成否のカギは

「民主党議員の反乱」という政治力学【永田町25時】

 衆院本会議で郵政民営化法案が採決される寸前、官邸に入った1本の電話に首相秘書官の飯島勲の顔が青ざめた。電話の主は自民党国対幹部。
「約束していた民主党の5人が反対に回ると通告してきた」というのだ。
 民主党から5人が賛成に回れば、法案が否決されることはまずあり得ない。だが、それがないとすれば法案の衆院通過は薄氷。飯島は慌てて首相の小泉純一郎に連絡をとった。
 小泉らがターゲットとしたのは、民主党内で副代表の小沢一郎に反発する5人。約束の内容は次期衆院選で自民党公認にするというもので、5人の選挙区の自民党議員(と立候補予定者)はいずれも郵政民営化法案に反対のため、次期選挙では公認されず自民党候補がいなくなる。
 5人に決断を促したのは選挙区事情だけではなく、民主党内の情勢もあった。衆院採決の2日前の東京都議選を契機に、小沢サイドが代表の岡田克也の退陣を求める動きを本格化させていたのだ。目指していたのは鳩山由紀夫代表―小沢幹事長の体制。樋高剛ら1、2回当選組でつくる小沢を囲む勉強会「一新会」のメンバーが活発に動き、都議選で民主敗北なら、鳩山グループと米沢隆ら旧民社党グループで一気に攻勢をかけるはずだった。小沢の目論見では、岡田に退陣を突き付けた後、衆院で郵政法案を葬り去り、小泉が解散を断行するまでの間に新代表を選び、その勢いで政権を獲得する手筈だった。衆院で法案否決の場合、小泉が9月11日を衆院投票日にしているという情報が小沢のもとには入っていた。時間は十分あった。
 反小沢の民主党の5人にとってこの流れは好ましくない。鳩山―小沢の民主党政権には、自民党を除名された綿貫民輔や亀井静香らのグループが連携する可能性が強く、反小沢で岡田支持とみられている議員は傍流となる。そこで五人はいったん小泉サイドの誘いに乗り、法案に賛成して解散を阻止することにした。もともと5人が望んでいた自民党公認での選挙は来年の秋以降なのだ。(後略)

 

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