記事(一部抜粋):2005年7月掲載

経 済

疑惑深まる「木村銀行」

五味・金融庁に火の粉も【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)A 今後が注目されるという意味では、相変わらず、日本振興銀行もそうだね。この座談会でも繰り返し話題にしてきたが、振興銀行のとんでもない経営実態がさらに浮き彫りになってきた。『週刊東洋経済』などで次々と不透明な融資問題が報じられているし、これは大変な問題だと思う。
B たしかに大きな問題だ。なにしろ振興銀行の実質経営者である木村剛氏のファミリー企業に対して、破格に安い貸出金利の融資が行われているわけだからね。記者会見で木村氏は「情実融資ではないか」と問われて「情実ではない」と答えているが、誰も納得できないだろう。
A 情実などという甘いレベルでは済まないのではないか。機関銀行そのものだ。ファミリー企業への融資額は合計五億円程度だが、日本振興銀行にとっての5億円は大きいよ。預金保険機構など特別な融資先を除くと、本来、振興銀行が顧客とする中小零細企業向け融資残高は60億円程度。つまり、全体の融資額の100%近くがファミリー企業に流れていることになる。
C しかし金融庁は相変わらず静観しているね。五味廣文長官も記者からしばしば振興銀行について質問されているが、「個別案件については発言を控える」と答えるだけだ。
A 五味長官のそうした姿勢に、金融庁の中堅幹部たちの間には不満が募りつつある。「絶対におかしい」と言い切る官僚も出始めた。金融庁の内部できな臭さが増している。
B 金融庁では、木村氏と五味長官が親密な関係であることはよく知られている。伊藤達也大臣と木村氏の仲がいいことも同様だ。だからこそ、まともな神経を持っている官僚たちは我慢ができなくなっている。「金融庁としての最大の危機だ」と言ってはばからない官僚もいるほどだからね。
A 大げさな話ではなく、金融庁を巻き込んだ疑獄にすらなりかねない。金融庁は近年、銀行が自分たちの努力で内部の問題を解決することを求めている。それがガバナンスだといってね。同じことが、いまの金融庁にも言えるだろう。
C UFJが自らの手で問題を解決できず、金融庁の検査によって外部解決を余儀なくされたように、金融庁も自らの問題を解決できないなら、検察などの手を借りるより仕方がない。東京地検の特捜部長は、かつてのMOF担・大蔵省事件のときに主任検察官を務めた人物だ。いわば土地鑑があるわけだから、この問題に関心を寄せたとしてもおかしくない。そうなったら金融庁は大混乱だ。
B 旧大蔵省時代からのOB連中の間でも、心配する声が増えている。ある有力OBは「五味君は身辺をきちんとしないと」と注文をつけていたよ。
C そういえば、アイフルの福田吉孝社長が日本振興銀行の買収を仄めかしたそうだが。
A 記者懇談会の席上で、買ってもいいかな、というような話をしたらしい。リップサービスをしたという程度のことだと思うけどね。いくらなんでも本気とは思えない。
B 福田氏が銀行買収に興味を持っているのはまちがいない。最も有力とみられていたのは東京スター銀行だったが、どうも、その線はなくなったらしい。その代わりに振興銀行というのはちょっとストーリーとしては尻すぼみだね。
C しかし金融庁は、第三者が現れて振興銀行を買収してくれることを願っているフシがある。そうすれば、木村剛問題を切り離すことができるからだ。なかなか買い手が出てこないとなれば、どうなるか。福田氏はそういう状況を待っているのかもしれない。つまり、水面下で「振興銀行の面倒をみてほしい」という依頼がやってくる瞬間をだ。
A しかし、振興銀行の株主構成をみると、買収は難しいのではないかという気がする。結構いわくつきの連中が株主になっているからね。木村氏の保有株が売買されるというだけでは事は解決しないだろう。(後略)

 

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