記事(一部抜粋):2005年5月掲載

社会・文化

勝者の裏の顔は「乗っ取り屋」

ホリエモンは捜査対象にしていい人物」検察幹部の不気味な予告

「分割マジック」を使って株価を吊り上げ、市場内時間外で発行済み株式の3分の1強を買い占めるといったTOB(株式公開買い付け)規制逃れで敵対的買収を仕掛けたライブドアは、「マーケットの無法者」である。
 そんな「無法者」に対しては、「マーケットの番人」である証券取引等監視委員会が調査すべきではないかという声があがった時、同委員会の幹部がこう言い放ったことがある。
「今はまだその時期じゃない。むしろライブドアは、ニッポン放送買収という行為によって、制度上の不備を広くアナウンスしてくれている。我々が調査・告発を経てそのあたりを警告するより効果は大きく、本音では『ありがたい存在』だと思っている」
 ここ数年で企業を取り巻く環境は大きく変わった。商法は次々に改正され、株式や社債の発行条件が緩和され、市場からの直接調達の自由度は広がった。その代わりに情報開示ルールは厳しくなり、有価証券報告書の虚偽記載のような証券取引法違反は、逮捕を伴う「重罪」となった。
 ライブドアは、そうした時代の変化を先取り、ルールの隙間をビジネスチャンスとする株主資本主義時代の「鬼っ子」である。モラル違反をものともしないこの時代の寵児は、方々で摩擦を起こすが、大型分割や市場内時間外でのTOB逃れが新たな規制の対象となったことに象徴されるように、結果的に行政の不備を補っている。そこにホリエモンことライブドアの堀江貴文社長の「存在意義」があるというのだ。
 一方で検察幹部のなかには、こんな不気味な「予告」を漏らす人もいる。
「騒動の最中だから今は手を出す気はないが、ホリエモンは捜査対象にしていい人物だと思う。ルール違反すれすれの行為で会社を大きくしているのは明白で、企業秩序を乱している。『なんでもあり』でカネを稼ぎ、『稼ぐが勝ち』を持論とする企業経営者には、どこか必ずスキがある」
 検察と証券取引等監視委員会――日本を代表する捜査・調査機関の両者が組めば、どんな企業も逃れられないのは、「不滅」と思われた西武王国が、わずか半年で崩壊した例が示す。その両者の見解が異なっているように見えるが、実はそうではない。ライブドアを時代の象徴とみなし関心を寄せ、利用しようとしているのは同じ。企業秩序に敢然と挑む堀江氏は、そんなリスクも抱えている。
(後略)

 

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