記事(一部抜粋):2005年5月掲載

経 済

【企業研究】

セブン‐イレブン・ジャパン 止まらない加盟店の反乱

 「セブン‐イレブン・ジャパンのFC商法には詐術性がある。その被害者は全国1万店のFC加盟店である」
 そう聞くと、ほとんどの読者は「まさか」と否定されるに違いない。コンビニエンスストアの最大手にして、消費不況といわれる中でも増収増益を続けるエクセレントカンパニーが詐術を働いているなどとは、ふつうは誰も思わない。総会屋による悪質な言いがかりか、ブラックジャーナルの誹謗中傷と片付けられるのがオチだ。
 しかし、「セブン‐イレブン=詐術会社」説を主張しているのが、北野弘久・日本大学名誉教授だと聞けば、単なる言いがかりと無視するわけにはいかないだろう。北野氏は税法学の第一人者として知られ、マスコミから取材を受けることも少なくない。最近話題の大阪市が職員の年金保険の掛け金を公費で負担していた問題でも、「常識的な福利厚生の範囲を大幅に逸脱しており、職員への給与支給と同じと認定していい」(日本経済新聞へのコメント)などと、的確な現状認識に基づいた見解を述べている。
 その北野氏の論文が『税経新報』という専門誌の2005年3月号に掲載されている。タイトルは「コンビニエンスストアに係るチャージ契約の詐術性」。
 北野氏はその中で、セブン‐イレブン本部がFC加盟店と取り交わす契約や会計システムについて《法的偽装》《憲法90条(公序良俗)に違反》などと厳しく指弾するとともに、自らの助言で加盟店の1人がセブン‐イレブン関係者を詐欺罪で刑事告訴したことも明かしている。この北野氏の主張は、本誌が連載「FCの光と影」(00年9月号〜04年10月号)など通じて追及してきた問題とも重なっている。
 そして本誌前号《セブン‐イレブン「痛恨の逆転敗訴」》にあるように、この2月24日、不当にチャージを徴収され続けたとしてセブン‐イレブン本部を訴えていた加盟店主の主張がついに東京高裁でも認められ、セブン‐イレブンに不当利得2200万円の返還を命じる判決が言い渡された。「チャージ契約の詐術性」が司法の場で認定されたのである。
「チャージ契約の詐術性」とは、いったいどういうことか。それを説明する前に、チャージ(一般にはロイヤリティという)の仕組みについて紹介しておこう。
 FC契約に基づいて、セブン‐イレブン本部は、加盟店の粗利のおよそ半分をチャージ(ロイヤリティ)として徴収している(チャージ率は契約形態の違い=店舗用不動産を加盟店が自前で用意するか、本部から借り受けるか=によって異なり、後者のほうが高く設定されている。また加盟店の売り上げが高いほどチャージ率は累進的に高くなる)。
 チャージの元となる粗利は、売上高から原価を差し引いたもので、セブン‐イレブン店舗の場合、粗利益率は約三〇%(05年2月期実績は30.7%)と一定している。
 仮に月商が2000万円の店舗なら粗利は600万円となり、この600万円をセブン‐イレブン本部と加盟店が分け合う。チャージ率を50%とすれば、セブン‐イレブン本部が受け取るチャージは300万円。残りの300万円が加盟店の取り分ということになる。
 加盟店はこの300万円の中から店舗運営に必要な光熱費や人件費などの諸経費を負担し、残りが加盟店の利益ということになる。
 問題は、この「粗利」がセブン‐イレブンのFC契約においては、一般の会計原則とは異なる概念で用いられているという点にある。(後略)

 

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