「最後の抵抗を試みているね。抵抗勢力と戦うには捨て身しかない」
4月中旬になって小泉純一郎の口ぶりが変わった。自民党内の郵政民営化への抵抗が想像以上に強硬だと悟ったからだ。ならば解散総選挙に持ち込んででも初志を貫徹してやる、そう覚悟するまで追い込まれたのだ。
2月中旬までは、小泉も周辺も楽観論だった。郵政民営化担当相の竹中平蔵は、持ち株会社に政府保有株式の売却益と配当収入で基金をつくり、簡易保険と郵便貯金の全国一律サービスを維持、あわせて過疎地の郵便局を支援するという竹中案で「案外スムーズに党が了承しそうだ」と小泉に報告していた。ところが、状況はその後、悪化の一途だ。
悪化の理由は二つある。一つは政府の民営化案作成の中心となった竹中への自民党議員の不信感の増大。その裏にあるのは「竹中は米国ファンドの手先では」という思いだ。
もう1つは反日デモと日本製商品ボイコットを拡大させた中国の動き。狙いは明らかに小泉政権への揺さぶりで、これに民主党と自民党内の反小泉勢力が同調した。こちらの背後には中国市場を重視する財界がいる。
竹中への不信感増大は、ライブドアによるニッポン放送乗っ取りが火をつけた。自民党の多数の議員がリーマン・ブラザーズという米投資銀行の資金提供によるこの買収に不安感を抱いた。ライブドア社長の堀江貴文の人脈が竹中につながっていたからだ。
ネットによる短時間の時間外取引は、買い手と売り手の間に事前の約束があれば証券取引法違反だ。だが、即座に「違法ではない」と言い切ったのは竹中の弟分の金融担当相の伊藤達也で、しかも堀江は「事前に金融庁幹部に相談した」と語った。堀江の周辺には、竹中と昵懇で日本振興銀行の免許取得をめぐり金融庁が便宜を図ったという疑惑が囁かれている木村剛や、その友人である村上ファンドの村上世彰らがいる。
リーマンと堀江をつないだのは、竹中も知り合いの日本における米国ファンドのフィクサーWだという情報も国会に流れている。(後略)