記事(一部抜粋):2005年4月掲載

社会・文化

セブン‐イレブン「痛恨の逆転敗訴」

東京高裁で裁かれたコンビニFC残酷商法

 2月24日、コンビニエンスストア業界にとって極めて重要な意味をもつ司法判断が下された。業界最大手のセブン‐イレブン・ジャパンに対し、同社とフランチャイズ(FC)契約を結んだ加盟店が、不当にロイヤリティを徴収されたとして、その返還を求めた裁判で、東京高裁は加盟店の訴えを棄却した一審判決を破棄し、セブン‐イレブンに「不当利得」の返還を命じる判決を下したのだ。
 セブン‐イレブンの売上高の大半を占めるのは、全国1万店の加盟店から吸い上げるロイヤリティ収入である。今回の裁判では、そのロイヤリティ(セブン‐イレブンではチャージと呼ぶ)の徴収方法をめぐる是非が問われ、結果、非はセブン‐イレブン側にあるとの判断が下された。同社が30年にわたって実行してきた「加盟店の犠牲のうえに成長するビジネスモデル」が、司法の場で初めて否定されたのである。
 訴えていたのは、埼玉県内でセブン‐イレブン店舗を経営するH氏。H氏は、消費期限切れとなって廃棄される弁当などの商品の仕入原価や、万引きなどで品減りした分の商品の原価にまでセブン‐イレブン本部がチャージをかけるのは不当だとして、この廃棄ロス原価と棚卸ロス原価にかかったロイヤリティの返還を求めていた。
 本誌は連載「FCの光の影」(2000年7月号〜04年10月号)などを通じて、コンビニFC本部が詐欺的な勧誘や欺瞞的な会計システムを駆使して、加盟店から利益を不当に吸い上げている実態を追及してきた。その中で、廃棄ロス原価と棚卸ロス原価(=加盟店にとっては損失)に、本部がロイヤリティをかけているカラクリについても紹介した。H氏が「不当」だと主張するのは、このカラクリを本部が事前に十分説明しないままFC契約を締結してしまい、店舗開店後も納得のいく説明がないままロイヤリティを徴収され続けてきたという点である。 (中略)高裁は、セブン‐イレブンはH氏に「粗利は売り上げから原価を引いたもの」「その粗利を本部と加盟店が分け合う」といった説明はしていたものの、セブン‐イレブン流の粗利(同社では「売上総利益」と称している)の定義について十分な説明はしていなかったと結論づけた。また、難解で整合性に欠ける会計用語を使用している点についても、一般人がセブン‐イレブン式のトリッキーな会計システムを正確に把握するのは難しいという趣旨の判断を下した。そのうえで、廃棄ロス原価や棚卸ロス原価に課せられたロイヤリティは「不当利得」にあたるとして、その返還を命じたのである。
 知らず知らずのうちに不利な契約を結んでしまい、長年にわたって経営苦に喘いできた全国の加盟店にとっては、まさに画期的な判決である。逆にセブン‐イレブンを筆頭とするコンビニFC本部にとっては、経営の根幹を揺るがしかねない痛恨の判決となった。というのも、加盟店が本部を相手に不当利得の返還を求めた同種の訴訟が、全国的にいくつも起きているからだ。
 セブン‐イレブンはすぐさま上告し、最終的な司法判断は最高裁に委ねられることになったが、その結果いかんによっては、コンビニ各社は経営上、深刻な状況に陥る可能性がある。加盟店が夜逃げしようが自殺者が出ようが、本部だけは肥え太るというビジネスモデルが今後、通用しなくなる事態が十分想定できるからだ。(後略)

 

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