(前略)
B そういえば最近、監督局のエリート補佐が辞表を出した。民主党から立候補するためだ。政権への目配りばかりに一生懸命になって、木村氏による日本振興銀行設立など、きわめてグレーな出来事を引き起こした幹部たちに嫌気がさしたから、という情報が流れている。
A その一件は、金融庁の若手連中に大きなショックを与えているみたいだ。金融庁が内部崩壊する前兆とでもいえる出来事として、かなり深刻に受け止められている。
B 確かに内部崩壊の兆しかもしれない。五味廣文・金融庁長官は「ミスター金融庁」のように言われてきた。それを喧伝したひとりが盟友の木村氏だ。竹中平蔵・前金融担当大臣に木村氏を引き合わせたのも五味氏だ。金融庁のいい部分も悪い部分も、五味氏という存在と密接に絡んでいる。その五味氏が長官のときに内部崩壊が始まるというのは、ある意味、必然かもしれない。
C その五味氏自身も、長官を無事に終えたら政界に転出する用意をしているという話が聞こえてくる。昨年の長官人事のときも、もし長官になれなかったら神奈川県から出馬するという噂が流れた。
B 大臣が竹中氏から伊藤達也氏に代わって、五味氏が喜んだという話も財務省筋から聞こえてくる。
C そうらしいね。竹中大臣の下では目立たないが、手腕の乏しい伊藤大臣の下なら存在をアピールできるからだとか(笑)。
(中略)
A それはそうと、金融庁をみるうえで大きなファクターは自民党内の勢力地図の変化だ。ここにきて自民党の財政部会、金融問題調査会など、メンバーが随分変わってきている。
C そのようだね。若手の江崎洋一議員などが小委員会の委員長を務めている。若手の台頭が始まったという気がするけど、実際のところはどうなのかな。
B 残念ながら、その見方は正しくないね。確かに、表面的には江崎議員などが目立ってきているが、それはあくまで表面だけだ。その背後で物事を動かしている人がいる。
C 金融担当大臣を務めた柳沢伯夫議員のこと?
B そう。柳沢氏は小泉政権で金融担当大臣を務めたが、結局、竹中・木村剛・五味ラインに敗れる格好となり、小泉首相から三行半を突き付けられ、竹中氏へバトンタッチさせられた経緯がある。しかし、自民党内では着実に復権を遂げている。柳沢氏が名実ともに自民党内の財務省・金融庁関連のドンに上り詰める日はそう遠くないだろう。これは、金融庁の官僚たちにとっても無視できない話だ。
A そういう風向きになって、最も早く動き出したのが、ほかならぬ伊藤大臣だ。すでに前任の竹中大臣から距離を置いているが、ここにきて、柳沢氏に擦り寄っているというよ。若いときから政治家を目指していただけに、さすがに身の振り方は素早い。政策手腕はまったく評価されていないが、その一点だけは「大したものだよ」とあるベテラン議員が褒めていた(笑)。(後略)