経 済
「統合報道」のカラ騒ぎ
三井住友・大和証券「大統合」の針小棒大【金融ジャーナリスト匿名座談会】
(前略)
B UFJへの経営統合申し入れからTOB宣言に至るまで、西川氏が仕掛けた一連の荒業は失敗する可能性がきわめて高い。本人も劣勢に置かれていることは認めている。つまり、この失敗は金融庁検査とはまったく別のレベルで、やはり大きな責任問題ということになる。
A 三菱東京はUFJとの統合比率を早く発表したがっている。いまのところ、1対0.6が有力で、これにどれだけプレミアムが乗るかだけど、いずれにしても、統合比率が出たところで事実上、西川氏のチャレンジは幕を閉じざるを得ないだろう。そのとき、西川氏はどういう対応をとるのか。
C 2月中に統合比率が発表されて西川氏の完敗が明確になると、3月中の辞任というのもまんざらではなくなる。しかし、UFJ統合と同じくらいの重みがある合従連衡に成功すれば、話は違ってくる。
B そう。そこに飛び出したのが2月10日の日経新聞1面トップを飾った例の記事だ。
A 三井住友フィナンシャルグループと大和証券グループが経営統合するというスクープね(笑)。
C 日経新聞としては破格の扱いと言っていいほどの大きな記事だった。
A 率直にいって異様な扱い方だったと思う。三菱東京・UFJの経営統合の記事よりも扱いが大きいくらいだもの。金融に精通している人たちはおそらく、あの記事に違和感を覚えたんじゃないかな。
B 同感。あれは確かに変な記事だった。なぜって、三井住友はすでに大和証券の株式を40%保有する最大株主だ。そんな親密な関係にある銀行グループと証券グループが経営統合したとしても、それほどのサプライズではない。にもかかわらず、日経の記事は世紀の大報道というような体裁だった。まるで、演技は下手なくせに最後の着地だけは仰々しく決めてみせる体操選手のようだ。
A 記事の中味も酷かった。金融コングロマリットなんて用語を堂々と解説していたけど、早い話、中味はからっぽといっていいほどの希薄さだ。
C 相変わらず、資産規模の話が中心で、それも銀行の資産と証券の資産を合計すると、みずほグループを抜くというような内容だったね。しかし証券の資産は預かり資産だ。貸出資産が中心の銀行資産と証券の預かり資産を同類で扱うなんて、勘違いも甚だしい。
B 預かり資産は顧客資産だ。資産合計を云々するなら、信託銀行の信託勘定を足せば、もっとデカくなるだろう。銀行の貸出資産は銀行の資産だが、預り資産は証券の資産じゃないし、信託勘定資産も別物だ。金融の初心者だって、こんなバカげた計算はしないよ。
C しかも、三井住友FGは大和証券グループの収益を上乗せして収益額が増えて、公的資金の返済を急ぐというような表現までしていた。いかにも、それが素晴らしいことのように書いていたけど、それってとんでもない話じゃないか。三井住友以外の大和証券グループの株主にとっては、許しがたい暴挙というしかない。
A そもそも、収益が上乗せになるといっても、すでに株式を40%保有している。その比率の連結持分利益を三井住友は得ているのだから、統合で新たに得られる金額は大和証券の収益額すべてではない。とんでもない計算違いだ。
B 一部の週刊誌が報じていたように、両グループのトップとして掲載されていた写真は西川氏と、大和証券の原会長だ。ところが原氏には代表権がなく、実権は後継者の鈴木社長に移っている。にもかかわらず、原氏の写真を出したのは完全にミステイクだ。
C 金融コングロマリットを先取り、なんて解説にも笑えたね。あんな経営形態は、すでに三菱東京もみずほもやっていることじゃないの。(後略)