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企業買収で知られる旧通産省OB・村上世彰氏の村上ファンドが筆頭株主だったフジサンケイグループのニッポン放送で、今度は大和証券SMBCが発行済み株式総数の約8%を取得したことが明らかになった。「大和証券は保有株を短期で売却する公算が大きい」(市場関係者)とあって、売却先として村上ファンドのほか、メディア参入を目論む外資やITベンチャーの名前が浮上。慌てたフジテレビは急遽、ニッポン放送を株式公開買い付け(TOB)によって子会社化すると発表した。危機感を募らせるフジテレビは今後、グループのメディア事業の再編に着手することになりそうだ。
フジサンケイグループといえば、昨年4月に『フジサンケイビジネスアイ』としてリニューアルした日本工業新聞社も、親会社の産経新聞の支援によって累損は解消したものの、業績は芳しくない。グループの大きな重荷になっており、一部にはあのライブドアが触手を伸ばしているという噂がある。
さらに業界紙の老舗、日刊工業新聞社に興味を示しているところもあるという。同社は昨年、メーンバンクのりそな銀行から、債務の株式化による支援を受けたが、借入負担は依然として重く、業績回復のメドも立たないだけに、身売りの可能性は否定できない。このほか、某大手IT企業がある大手業界紙を狙っているとの情報もある。
大手メディアも安閑としていられない。テレビ、ラジオのデジタル化や活字離れ、少子化などによって、各社とも大型設備投資や再編、経営統合を迫られつつあるからだ。
この業界もボーダレス化が進み、いまや異業種や外資にとっては最大のターゲット。大手家電メーカーや商社、IT企業、国内外の企業買収ファンド、そして外資が虎視眈々と狙いを定めているという。ターゲットの中心は、TVキー局とラジオ。すでに業界内では、「村上ファンドやソフトバンクがTBSを狙っているらしい」「朝日新聞系のテレビ朝日や、上場したばかりの日本経済新聞系のテレビ東京で、親会社の思惑と絡んだ動きがあるかもしれない」といった噂が飛び交っている。
そのほか読者離れが進む新聞各社、四期連続の経常赤字に苦しむ時事通信社などの通信社、不況業種になりつつある出版、またスカイパーフェクTVやWOWOWあたりも再編・買収のターゲットになろう。
いずれにしても今年は「メディア再編元年」になる公算が大きい。そうなると、プロ野球界に負けず劣らず旧態依然としている業界だけに、外様からの攻勢で大きな混乱は必至。再編の引き金をどこが引くのか、大いに注目される。
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