記事(一部抜粋):2004年12月掲載

社会・文化

「経歴詐称」で告発された流山市長 

「英国ウェールズ大学教授」を名乗って見事に当選

(前略) 井崎義治市長(50歳)。主婦受けする清々しい風貌に加え、100%純粋無党派、しがらみのなさを前面に打ち出したのが功を奏して、高齢の前市長に厭きていた流山市民の支持を獲得、昨年四月の統一地方選で見事、初当選を果たした。
 市長選に臨んで井崎氏が公表したプロフィールによると、氏は1954年の東京生まれ。流山に隣接する柏市で少年時代を過ごした後、山形県の基督教独立学園高校に進んだ。卒業後、今度は仏教系の立正大学に入学。さらに米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校大学院に進み修士課程を終了。米国で都市計画コンサルタントを8年半務め、帰国後は民間シンクタンクで都市問題、都市政策研究を手がける傍ら、2000年7月には「英国国立ウェールズ大学大学院環境プログラム助教授」に就任。02年1月から「同大学教授」を務めた、とある。ほかにも建設省(現国土交通省)の「住宅政策研究会」や、世界都市博覧会、国連大学が主催した「大都市の未来会議実行委員会」など多数の公的会議で「委員」を歴任――したことになっている。
 額面どおり受け取れば、井崎氏は行政に通じた国際的ビジネスマン、かつ有能な研究者、という申し分ない経歴の持ち主である。なるほど流山市民が市政を託したくなるのは当然だ。しかし、井崎氏のこの華麗なる経歴にはいくつものウソがある。その最たるものが「英国国立ウェールズ大学大学院環境プログラム教授」という肩書きだ。
 プロフィールを読むかぎり、だれもが井崎氏を、イギリスの国立ウェールズ大学の歴としたプロフェッサー(教授)だと思うだろう。ところが、市民団体「流山市政研究会」(代表・村串仁三郎・法政大学教授)が不審に思って調べたところ、ウェールズ大学に「井崎」という名の教授など在籍した事実がないことが判明したのだ。
「村串さんのお嬢さんがウェールズ大学に留学していたことがあり、日本人の教授などいないはずだというので、調べたのです。すぐにウソだとバレました」(ベテラン市議)
 昨年10月、村串教授らは井崎市長に「公開質問状」を提出、釈明を求めたが、市長は回答を拒否。そこで村串氏らは、虚偽の経歴を公表することを禁じた公職選挙法235条に違反する疑いがあるとして刑事告発に踏み切った。告発状は今年1月、千葉県警によって正式に受理されている。
 当然、市議会でも問題になり、3月の議会で、市長は疑惑について答弁せざるを得ない状況に追い込まれた。このとき井崎氏は、自身がウェールズ大学の教授である証拠として「辞令」なるものを日本語で読み上げている。
「辞令、井崎義治殿。貴殿を英国国立大学大学院環境プログラムの環境アセスメントコース教授として委嘱します」
 井崎氏はこのとき、言ったらマズイと思ったのだろう。誰から辞令をもらい、教授職を委嘱されたかについては明確にしなかった。実はこの辞令、「日本環境総研」という株式会社から受けたものだったのである。
「確かに日本環境総研という会社は、ウェールズ大学と提携して、同大学の名を冠した通信制の資格取得口座を日本国内で開設しています。受講料は二年間で約200万円。もちろん、この通信口座は日本の学校教育法に認められた大学院などではなく、文部科学省の管理下にもない。単なる私塾にすぎません」(前出の市議)
(後略)

 

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