有価証券の偽造報告にインサイダー疑惑、今年のプロ野球日本一に輝いたライオンズ球団の身売り報道と、世間の関心はいま西武鉄道・コクドグループに集中している。
その西武鉄道の上場廃止が決まったことで、グループの経営再建問題とともに次なる焦点となるのが、証券取引等監視委員会(SEC)の出方だ。インサイダー規制法違反容疑で東京地検への告発が果たしてなされるのかどうか。もちろん「堤・西武」を長年のテーマにしてきた国税当局の動きも見逃せない。コクドを主体とした粉飾疑惑も指摘されており、一大経済事件へと発展する可能性も出てきた。
粉飾といえば、今年はじめに産業再生機構入りとなったカネボウに、いよいよ東京地検のメスが入る。もっとも「強制捜査は年明けにずれ込みそう」(司法関係者)。というのも11月中に終了するはずだったUFJ銀行の銀行法違反(検査忌避)事件の捜査が、岡崎和美・元副頭取だけでなく、寺西正司・元頭取をも視野に入れているためだ。場合によっては、容疑が検査忌避以外に広がる可能性もある。
そのUFJの今回の事件。引き金を引いたのは、いうまでもなく竹中平蔵・前金融担当相だが、その竹中氏と、盟友であるコンサルタント会社経営の木村剛氏をめぐって、「竹中平蔵・木村剛贈収賄疑惑」と題された文書が出回り、話題になっている。
木村氏といえば、中小企業向け融資を売り物に設立された日本振興銀行の生みの親として知られるが、文書は、日本振興銀行が異例のスピードで認可された事情や同行の杜撰な融資体制などを糾弾、政財界の癒着、疑獄事件へ波及する可能性を指摘している。
《平成16年4月13日金融庁より銀行免許が交付され、同月21日、早産とも言える異常な早さで誕生した日本振興銀行。竹中担当相が日本振興銀行の免許書交付授与式後に(中略)一民間銀行に過ぎない新銀行に異例とも言える応援演説を贈ったのである》として、その2週間前の当時の五味廣文・金融監督局長が出席したソニーファイナンシャルホールディングスの授与式との対応の違いを強調しているほか、イトーヨーカ堂グループのIYバンクやソニー銀行が、母体が超優良企業であるにもかかわらず、銀行免許取得の際には金融庁から業務内容の見直しを求められ、開業がずれ込んだことなども引き合いに出している。
竹中氏と木村氏は、2002年9月の竹中金融相誕生後に作成された「金融再生プログラム」の中に、中小企業のセーフティネット拡充を盛り込み、新銀行設立の規制緩和を提唱したわけだが、この点について文書は、《自分が作成にかかわった政策を次の稼ぎのネタにしようとしたものなのだ。この事実は政財癒着も甚だしく、その裏には職権の乱用、贈収賄をはじめとする様々な疑惑事件が見え隠れする》と厳しく糾弾している。(後略)