記事(一部抜粋):2004年11月掲載

経 済

三井住友「西川案件」の足枷

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)B 三井住友の味方をするわけじゃないけど、中内氏がダイエーを去ったことで状況が変わった面がある。中内、西川の盟友ぶりは有名で、「中内が西川を押し上げた」という財界人もいるほどだ。数年前にダイエーがやはり問題になったとき、ダイエーの経営陣の誰一人として、中内氏に引退を勧められず、結局、西川氏にそれを頼んだことがある。しかし西川氏も中内氏の首に鈴をつけることはできなかった。
A 今回、再生機構入りに対抗して、ダイエーが独自の再生計画をつくったが、実はそれを手伝ったのが三井住友だ。三井住友は、UFJよりもはるかにダイエーとの因縁が深かった。だからこそのお手伝いだったが、その一方で、西川氏は竹中金融庁の方を向いていたわけだ。なかなか器用なことをするよね。
B しかし、それは無理もないよ。三井住友は金融庁の通常検査と特別検査のダブル検査を受けている真っ最中だからね。今回の検査は総勢40人以上の検査官を投入という過去に例がないほどの大検査だ。金融庁の意気込みが伝わってくる。三井住友がビビるのは当たり前といえるだろう。
A 確かにビビッてる。なにしろ、例の西川案件問題があるからね。
C しかも、その資料が外部に流出してしまっている。あれは前回の特別検査のときにつくられた資料で、言ってみれば、飛ばし的な手法で不良債権を銀行から外している実態が克明に記されていた。安宅とか、平和相互とか、昔懐かしい案件の名前がたくさん出てくる。
B 三井住友は「適正に貸倒引当をしている」と、問題がないという姿勢を貫いたが、釈然としない。問題含み案件としか思えないよ。
C ところが夏場前ころから、三井住友はそれらの案件をバルクセールにかけだした。最終処理に出たわけだ。バルクセールでは守秘義務がかかるから、バルクセールに応じた投資ファンドは多くを語らないが、売却していることはまちがいない。
A 知人のファンド関係者は「応札しようにも値段がつけられるようなシロモノではない」と言っていた。一方で、買い取ったファンドは「結局、塩漬けにするしかない」とも語っている。
B だとすれば、西川案件のバルクセールで三井住友には実損が発生しておかしくないわけだ。適正な引当をしているといっても、実質破綻、あるい破綻懸念並みの引当ではないはずだからね。ところが、バルクはしているという一方で、三井住友に売却損が出ているという情報は聞かれない。これは不思議な話だ。損はいったいどこに行ったのかと言いたくなる。
C 中間決算発表の際に、果たしてどんな説明がなされるのか。多少の損失程度で済むような話ではないように思えるが。
A 金融庁は最終処理を強制するだろう。資料まで外部に出回っているのだから。妙な処理をすれば、金融庁が問題にするはずだ。いずれにしても結果が見物だね。
C まあ、大変な事態に発展するのはUFJだけにしておいてほしいものだけど(笑)。
A 西川氏も、それは百も承知だろう。ほどよい着地を望みたいね。
B しかし一方で、金融庁の検査では、検査官がゴールドマン・サックス関連の資料を提出させたという話が流れている。
A その話は耳にした。なんだか、とってつけたような話で、眉唾モノではないかと思っていたけどね。
B 確かによく分からない話だ。しかも、時間の経過とともに尾ひれがついてくる。
A シティバンクの処分など、金融庁の検査部門はこの間、外資系金融機関に対する検査を厳しくしている。知り合いの外銀マンも「検査官がごっそり資料を持っていってしまった」と驚いていたよ。三井住友のケースもその一環で、ゴールドマン・サックスの検査のネタにしようとしているんじゃないの?
B しかし、三井住友にあるゴールドマン・サックス関連の資料は、三井住友の増資などの資料だろう。やはり、三井住友とゴールドマン・サックスの関連を調べようとしているのではないか。もちろん、ゴールドマン関連の資料を提出させたという話が本当ならば、だけどね。
C そういえば、ちょっと前のことだけど、竹中大臣の周辺が「三井住友をもう少し絞ってやる」などと物騒な話をしている、という話を聞いたよ。(後略)

 

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