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そうした中で注目されるのが、西武ライオンズのオーナー企業である西武鉄道だ。2004年3月期に85億円の最終赤字に転落、主力のレジャー・サービス事業も3期連続の赤字が見込まれている。有利子負債は単体で7968億円、グループでは1兆円と、実はダイエー並みの過剰債務企業なのだ。しかもバブル期に12兆円以上といわれたグループ保有の土地の含み益は、いまや1兆円にまで激減しているという。
グループ最大の爆弾が「西武のブラックボックス」といわれるコクドだ。未上場の同社は経営情報の開示に消極的で財務内容は極めて不透明、株主構成も公表されていない(堤家が約八割を保有している模様)。内部資料によると、損益ベースでは9期連続の赤字、負債は約3800億円、実質債務超過という惨状だ。
「西武鉄道はこれまで、親会社のコクド及び兄弟会社のプリンスホテルとの間で、不良資産を抱えたグループ会社の売買を繰り返して損失処理を進めてきた」(金融関係者)というが、その手法もいよいよ限界に近づきつつあるらしい。それだけに、年間20億円の赤字を抱える西武ライオンズは重荷どころか致命傷になりかねない。堤義明オーナーが今回、背に腹は代えられないと読売巨人軍の渡辺恒雄前オーナーと組んで球界再編を先導しようとしたのも頷ける。
今後の減損会計への対応も自助努力だけでは難しく、ホテルなどの資産売却を骨子とした再建計画の策定を迫られる可能性もある。さらに、コクド支援に西武鉄道が巻き込まれることになれば、コクドが西武鉄道の連結対象となってグループの実態が白日の下にさらされかねない。総会屋への利益供与事件で西武鉄道の会長を辞任した堤オーナーの求心力低下を指摘する声もある。
近鉄、西武と電鉄系の球団オーナー企業の経営不振が深刻化しているわけだが、かつて球団を所有していた阪急電鉄(オリックスに球団売却)、南海電鉄(同ダイエー)も気がかり。両社ともUFJ銀行がメーンバンクで、三菱東京とUFJの合併の影響を受けかねないからだ。
阪急グループで問題となるのは、02年3月に上場廃止となり、阪急電鉄の連結子会社となった阪急不動産。同社はバブル期、電鉄本体とUFJのダミー的存在として再開発事業にのめり込み、その負の遺産とともにトラブルも絶えず、4期連続の当期赤字を強いられている。(後略)