記事(一部抜粋):2004年10月掲載

経 済

統合騒動の隙を突く「みずほ」

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
A 経営統合は、たしかに将来を見据えた積極的な経営判断だが、実際に経営統合するまで日々、膨大な作業に追われる。営業に振り向けるエネルギーが殺がれるその間、三菱東京とUFJはどこまで自分たちの顧客を守れるか。経営統合という現象を考えるうえで、見すごせないポイントだ。
C どの銀行も、顧客の掘り起しにはある意味限界を感じている。この数年、既存の取引先には、ありとあらゆる商品を売ってきたからね。だから、いま以上の利益を稼ぎ出すには、他の銀行から取引先を奪い取るしかない。その局面が三井住友とみずほに訪れたということだ。このチャンスをむざむざ逃すことはしないだろう。
B 三井住友もみずほも、まだ返済しなければならない公的資金が残っている。そのためにも、利益を稼ぎ出さなければならないわけだ。
C みずほはこの間、みずほ証券が農林中金と資本提携し、さらにみずほ証券の株式上場を具体化させることを明らかにした。興銀リースが上場し、いずれ、芙蓉総合リースも上場するだろう。こうして得られる上場益を公的資金の返済に活用するのはまちがいない。
A それもまた、他社が経営統合にエネルギーを割いているうちに、独自路線を突き進むというみずほの戦略の現れだろう。みずほは勝負に出た感じがするな。
B 確かに、経営の桎梏になっている公的資金を一日でも早く返済しようという姿勢が顕著だ。このままでいくと、三菱東京に続いて、公的資金を完済するのはみずほということになるだろう。戦略性が感じられる動きだ。
C 経営統合問題で、世間の注目はUFJ、三菱東京、三井住友に集まっているが、みずほの動きは要注意ということだね。
A ダイエー問題でも、みずほは独自にいろいろと動いている。産業再生機構を活用する方針を主要取引銀行の一角として打ち出す一方で、丸紅や経済産業省と組んで、別の解決策を模索してもいる。あの動き方をみていると、旧興銀のDNAはいまも残っているのかなという気がしてくるよ。
B そのうち、中小企業戦略で何かやってきそうな気がする。すでに、オリコと保証提携して新たな中小企業向けローンをつくり上げているが、それに続く布石を打ってくるんじゃないかな。ライバル銀行の企画担当者たちは戦々恐々としているよ。
A 現時点では最も顧客基盤が大きい銀行だから、新たな戦略が打ち出されればインパクトは大きい。おそらく、三菱東京・UFJが経営統合する前に、派手にぶち上げてくるんだろうね。
C みずほは個人分野で、クレディセゾン、UCカードとの提携を実現した。当初はUCカードとクレディセゾンの合併を模索していたが、クレディセゾンが首を縦に振らないと判断し、瞬く間に戦略転換して提携へと持ち込んだ。
A みずほ、クレディ、UCの提携はインパクトが大きい。クレディとみずほの提携カードは来年春まで待たないと出てこないようだが、仮に年内にも出てくるようだと、ライバルは相当焦るだろう。すでに最強カードの雰囲気が漂っているしね。
B オリコとの提携がらみでもう一つ二つと打ち出してくると、ライバル銀行は気が気でなくなってくるはずだ。経営統合どころではない、という雰囲気が台頭してくるかもしれない。そうなれば、みずほは「しめしめ」と思うだろう。
(後略)

 

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