記事(一部抜粋):2004年9月掲載

経 済

竹中におもねる福井と西川 

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)A 福井氏には、かりにも中央銀行のトップとして、そういう論点を示してほしかったね。まるで、証券会社のアナリストのような発言なんだもの。
B ムードに流されやすい人なんだろう。それに、今回の三井住友の動きは、竹中平蔵大臣が考えてきたUFJ問題の処理路線に近いと言われている。竹中大臣は、UFJに公的資金をぶち込んで実質国有化に追い込み、場合によってはUFJを分轄して、りそな、住友信託などに分け与えるという大胆な外科手術を目論んでいたという有力情報がある。
C しかし今回の三菱東京によるグループ全体の統合は、その竹中路線とは相容れない。むしろ、相手が三井住友だと、信託は住友信託というように切り分けできる。
B 三井住友の西川社長も日銀の福井総裁も、竹中路線を意識して行動したり発言している、という見方は決して少なくないんだ。西川氏は今後、金融庁検査の標的になるリスクも抱えているしね。
A しかし日銀は無関係だろう。
B 違うね。日銀の上層部は常に竹中大臣を意識している。竹中大臣が日銀改革を提唱する可能性があるからだ。政府の考え方通りにならない日銀であれば、日銀法を再改正して、自由度を奪ってもいいというハラが竹中大臣にはある。今後、金融政策に圧力をかけることは必至だろう。
C そういえば、福井総裁が日銀の活性化などを強調しているのも、実は竹中対策だと、ある日銀OBも言っていた。その指摘は正しいだろう。福井総裁は竹中対策として、竹中路線に近い三井住友の動きに歓迎の意を示した、というBさんの見方に一票投じるよ(笑)。
A 日銀も死に物狂いなのだろうけど、何か重大な間違いを犯しているのではないか。日銀のために銀行が存在しているわけではないし、社会があるわけでもない。ところが日銀のための銀行論、合併論というような位置づけになっている。
B 西川氏が必死になって巻き返しを図ろうとしているのは理解できるし、同情もする。公的資金の返済圧力、三菱東京との過酷な戦い、不良債権処理を巡る金融庁検査等々、問題大ありだからね。
C UFJに対する厳しい金融検査では、主任検査官の目黒氏の大活躍が話題になった。その目黒氏が三井住友の検査にも関与するという噂はいまも絶えない。西川氏も心中穏やかでないはずだ。西川氏はいま、三井住友を守りきる最後の戦いをやっているのだろう。しかし、だからといって西川氏がやっていることのすべてが正しいということにはならない。最後の壮絶な戦いに負ければ、金融庁検査の前に責任問題が生じかねない。
A しかし、あえてリスクを取ったというのなら、それはそれで評価できる。もちろん、UFJは三菱東京と縁切りして三井住友の下に走れということにはならないが。西川氏本人も、これによってUFJが自分たちのほうにやってくる可能性があるとは、本心では考えていないだろう。
B だろうね。西川氏には、あえてそうしないといけない事情があるということだろう。
C 三井住友の参戦は、たしかに話題としては面白いよね。特に、金融関係者は面白がっている。しかし、なんだか虚しさが漂うのは、そういうホンネの部分が見え隠れしているからだ。
A しかも先ほどの話のように、こうした経営統合が利用者に大きなメリットをもたらすわけではない。これは近年のメガバンク再編全般にも言えることではあるが。
B あとは「でかくならないと有力外銀に買収される」といった日経新聞的な壮大な話題づくりだけだ(笑)。しかし、それは本質的な理由とはいえない。(後略)

 

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