(前略)そもそもこの東京三菱とUFJ、企業カルチャーが見事なほどに正反対なのだ。官僚的でエリート主義の三菱東京に対して、UFJは野武士軍団といわれ自由奔放な行風で知られる。ただでさえ銀行の経営統合、融合は困難を極めるだけに、双方が今後あらゆる場面で衝突するのは火を見るよりも明らかだ。
UFJに投入された一兆四〇〇〇億円もの公的資金の返済問題も重くのしかかる。UFJの自力による早期再建は不可能なことから、返済原資の捻出はどうしても三菱東京頼みにならざるを得ない。「結局は三菱東京の利益剰余金の一部償却に加えて、三菱東京の信用力による市場からの調達や優先株の普通株転換後の売却などで捻出するしかない」(金融関係者)とみられる。
ところが肝心の三菱東京はといえば、「公的資金アレルギーが強く、統合によって公的資金という借金を背負うことで信用力が低下するのを、本音では極度に嫌っている」(大手銀幹部)という。
統合の大前提となる大リストラも一筋縄ではいきそうもない。両グループの連結従業員を単純合計すると約五万四五〇〇人。みずほが二万七九〇〇人であることを考えれば、最低でも二万人規模のクビ切りは避けられない。当然その矛先はUFJ行員に向けられるとみられている。三菱東京には旧東京銀行の行員の大半を追放した実績もある。しかしUFJとて旧三和による旧東海パージを断行してきた経緯があるだけに、いくら救済色が強い統合とはいえ、すんなり事が運ぶとは思えない。とくに戦闘的なUFJ行員の猛反発は、大きな火種になりそうだ。
さらに、UFJ信託の売却を反故にされた住友信託の提訴問題がある。怒り心頭の住友信託は七月一八日、統合交渉差し止めの仮処分を東京地裁に申請したが、示談交渉になるか、損害賠償請求の本訴に発展するかにかかわらず、UFJに多額の損失が発生する可能性がある。
裁判沙汰といえば、金融庁がUFJの検査忌避問題を刑事告発する動きを見せたことが、統合決断の最後の決め手になったといわれる。「刑事告発は金融庁にとってはあくまでUFJに対する圧力の一環。統合となれば告発を見送るのではないか」(司法関係者)との見方が大勢だが、一方で「UFJが不良債権飛ばし」という仰天情報が囁かれている。さる事情通が打ち明ける。
「昨年一〇月の金融庁の特別検査で見つかった段ボール一〇〇箱に及ぶ資料の中に、問題になったダイエーなど大口融資先に関する二重資料などとは別に、不良債権のつけ替えや飛ばしを示す資料があったという噂がある。旧三和直系のデベロッパーである東洋不動産や親密融資先などを利用して不良債権を操作していたという話だ」(後略)