第二のMTCIか、という声もあがっている。本誌前号で、環境ベンチャーのESI(京塚光司社長)が四月に二度目の不渡りを出し、銀行取引停止になったことを報じたが、そんな中、同社を過大評価する記事を掲載してきたマスメディアの見識を問う声が上がり始めた。
MTCIはネットバブルと未公開株ブームに乗る形で投資家の人気を集め、『日本経済新聞』に全面広告を載せて未公開株の公募増資を告知。一般投資家から多額の資金を集めるなどして話題になったが、その後に破綻したことで、同社を必要以上に好意的に取り上げてきたマスコミが批判の対象になった。
ESIもマスコミに「期待のベンチャー企業」として頻繁に取り上げげられる一方で、業績は低迷。相次ぐ増資で綱渡りの資金繰りを続けてきたが、従業員への給与未払い問題に加えて、架空売上を計上していた疑惑まで浮上している。近い将来の株式公開を謳って出資を仰いできた同社の経営手法にも批判が出そうだ。
ESIは二〇〇〇年一月に設立されたベンチャー企業。生ゴミのリサイクルを標榜し、スーパーなどの事業所から出る生ゴミを回収、堆肥化させる仕組みをつくり、つくった堆肥を農家に売り、農家がつくった野菜をスーパーで売る、という循環モデルを提唱している。食品リサイクル法の施行という後押しもあり、有望なビジネスモデルと目されているのはたしかだ。
そのためマスコミにも好意的に取り上げられた。《環境ベンチャーの先駆け 食品廃棄物のリサイクルを促進》(週刊ダイヤモンド)、《今月のワザあり企業イー・エス・アイ 食品残さを地域で循環させ安定したリサイクルを実現》(日経エコロジー)、《組成分析し最適発酵 ESIが処理システム》(日刊工業新聞)等々、多くのメディアが期待をこめて取り上げてきた。
中でも積極的だったのが『日経ビジネス』など有力誌を多数抱える日経BP社だ。同社は〇二年秋、日本発の独創的な仕事をした人を表彰する「日本イノベーター大賞」(ビー・エム・ダブリュー後援)を創設。その第一回目の受賞者の一人としてESIの京塚社長を選び、優秀賞を贈呈している。なお、このとき同大賞の特別賞に輝いたのがノーベル賞の田中耕一氏(島津製作所)で、『日経ビジネス』の〇二年一一月一一日号には、同じ誌面で二人が揃って取り上げられている。(後略)