記事(一部抜粋):2004年6月掲載

経 済

証券マン「オフレコ」座談会

風が吹き始めた三井住友「金融不安」再燃の予兆

B 日米の株式市場が急に下げ始めてきたね。
C 日経平均のチャートも、「二点天井」になってしまった。
A その二点天井の谷間に出たのが、東京新聞(中日新聞)の「不良債権、UFJ新たに一兆二七〇〇億円」という記事(4月17日付朝刊一面)。
B 金融庁と銀行関係筋の情報だったようだけど、この記事がどうかしたの?
A 中日新聞というのが、引っ掛かるんだよ。
C 中日系以外は、一部を除いてほとんど後追い記事を書かなかったね。
A 中日新聞の顧問弁護士に、初代金融庁長官だった日野正晴弁護士と一緒に武富士のコンプライアンス委員会のメンバーになった人物がいるんだ。
C 日野弁護士といえば、名古屋高検検事長までやった有名な「ヤメ検」だけに、名古屋人脈は豊富みたいだね。完全に名古屋人脈を背景にしてた藤井治芳(前総裁)率いる道路公団のコンプライアンス委員会のメンバーでもあったようだし。
B いま思い出したけど、日野弁護士はジャスダックの倉員伸夫前社長の株式売買に関する調査委員会委員長にもなっていたよ。
A 実は日野弁護士は、住商リースの監査役でもある。前にも言ったように、財務省の考えは「日本にメガバンクは二つあればいい」というもの。だから、もう一段の金融再編が必要と考えている。
C 三井住友銀行がUFJ銀行取りに動き始めた、ということか。
A と言うよりも、三井住友に風が吹き始めた、ということ。
B 一方の東京三菱銀行は三菱自工の問題で身動きが取れないし、確かに三井住友にはチャンスかも知れないね。
A 最近の金融界の動きをよく分析してごらんよ。銀行だけじゃなく、証券やノンバンクに三井住友の陰が見え隠れしている。さっきの倉員前社長は大和証券の元副社長だ。大和は住友の資本が入っているといっても、完全な傘下企業ではない。その大和の次期社長に、住友からの出資を二倍に引き上げた鈴木茂晴専務の昇格が決まった。
C 三井住友と言えば、日興アセットとUFJが東海東京証券の保有株を放出した途端、三井住友海上が同証券と証券仲介で提携すると発表したよね。もし、大和が住友傘下となって、東海東京証券、UFJつばさ証券、それに住友傘下のSMBCフレンド証券まで加えると、三菱色の強い日興コーディアル証券と三菱証券との連合を大きく引き離すことができる。
B ちょっと待ってよ。金融から揺さ振りをかけられると、東京マーケットは上がんなくなっちゃうよ。そもそも今回の上昇相場のキッカケは、政府がりそな銀行を長銀や日債銀と違って株主責任を問わない破綻前処理をしたこと。もし三井住友が平和相銀の時のように、揺さ振りをかけながら取りに行くことにでもなれば、再び金融不安が発生してしまう。
A だから東京新聞のUFJの記事が、下げのサインだったんじゃないかと言っているんだよ。
C でもゴールドマン・サックス(GS)は、その記事の後、UFJの強気のレポートを発表した。
A その一方で、日経平均の先物を売ったり、プット・オプションを大量に買ったのもGSなんだ。三井住友の増資を引き受けたのもGSで、長谷工コーポの大株主になったのもGSだ。ところがGSは最近、長谷工の株を売り始めた。これは金融不安が再燃して、問題企業(大口貸し出し企業)にメスが入ることを想定しての動きだろう。(後略)

 

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