記事(一部抜粋):2004年6月掲載

経 済

竹中VS福井「バトル」の真相

口が裂けても言えない「インフレ」という言葉

 デフレ克服に向けた政府のシナリオをめぐり四月二六日、経済財政諮問会議で竹中平蔵金融・経済財政担当相と福井俊彦日銀総裁の間で、ちょっとした「バトル」があったと新聞各紙は伝えている。
 経済財政諮問会議のホームページの議事録で詳しく見てみると、そのやりとりは大略次のようなものだった。
 竹中担当相が、六月上旬にとりまとめる「骨太方針二〇〇四」のなかで、「〇六年度に名目成長二%を目指す」というデフレ克服のターゲットと期限を明示したい、と提起したのに対し、福井総裁は、日銀はすでに「消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ以上になるまで金融の量的緩和を継続する」との目標を掲げていると指摘したうえで、これでは「(日銀は)二つの数字目標を持つことになり、誤解を招く」として、政府シナリオの「主語」から、日銀を外すことを要求した。
 これに対し竹中担当相は、「政府目標に(政府と一体である)日銀はコミットしないということか」と批判し、では、デフレ克服に向けた日銀のシナリオを具体的に示せ、と迫った。
 これを受け福井総裁は、日銀に与えられている権限の範囲内で「数字を伴った名目成長率を金融政策のターゲットとする」ことはできないし、いわんや「(デフレ克服の)具体的な期限を示すことは難しい」と応酬した。
 この「やりとり」を新聞各紙は、デフレ克服に消極的とかねてから日銀に対し不満をもっていた竹中担当相と、福井・日銀との間の「バトル」と捉えたようであるが、これは少し読みが浅いと言わねばならない。このやりとりは、この時期、まことに時宜を得た、いまどきにしては珍しく真っ当な、非常に内容の濃い論争であった、と捉えることができる。
 実は、竹中・福井の両氏は、経済財政諮問会議の席上で堂々と、「インフレ」という言葉を一切使わずに、デフレ脱出に向けた実のある「インフレターゲット論」を展開しているのである。(後略)

 

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