記事(一部抜粋):2004年5月掲載

経 済

証券マン「オフレコ」座談会

郵政民営化に歩調を合わせた株価の奇妙な急騰劇

B 以前この欄で「M&Aを仕掛ける可能性が高い会社」として取り上げた、ジャスダック上場(〇三年一二月)のエスビーエスが三月三一日、雪印物流を買収したね。
A これで同社の売上高は一気に三倍になる。本欄で取り上げた時点で仕込んでいれば(約七〇万円)、一対二の株式分割を実施したうえに株価が一〇〇万円に乗せたから、投資資金が約三倍になった計算になる。
C 買収が新聞に載った四月二日に株価が急上昇したのはわかるけど、イラクの人質事件で今年三番目の下げ幅となった四月八日も、ストップ高近い上げになったのはなぜだろうか。
A 経済財政諮問会議が、郵政三事業民営化の中間報告素案を決め、八日に発表したからだと思うよ。
B どうしてエスビーエスの株価上昇と郵政民営化が関係あるの?
C 確か素案を決めた諮問会議の議長は小泉純一郎首相、郵政民営化の担当は竹中平蔵・経済財政担当相じゃなかった?
A その通り。この二人がキーマンなんだよ。本欄で何度か指摘したように、小泉のボス、森喜朗前首相が推進した「IT革命」でソフトバンクを時代の寵児に祭り上げ、NTTの足を引っ張る役割を演じさせた。これがいわゆる「ITブーム」の第一ステージだ。そして小泉が推進する「郵政三事業の民営化」が第二ステージということ。
C その第二ステージの主役がエスビーエスになると言いたいわけだね。
A 主役というより悪役。だから素案が発表された日に急上昇したんだろう。
B エスビーエスの役割を詳しく説明してよ。
A 郵便事業で郵政公社の足を引っ張る役割を演じると見ている。
C そう言えば、三月末にヤマト運輸が個人向けメール便の参入を発表した際、日経新聞は「郵政公社と全面対決」と騒ぎ立てていた。
A そのメール便のトップ級なのがエスビーエスなのさ。第一ステージでNTTの足を引っ張るヒール役(悪役)のボス格がKDDIだとすると、第二ステージでは、さしずめヤマト運輸がボス格で、行動隊長がエスビーエスというところだ。
C するとITブーム時のソフトバンクのように、エスビーエスも高株価政策をとって資金調達を繰り返し、企業買収をどんどんやるということか。
A おそらく、そうなるんじゃないかな。借金大国の米国は、日本のカネをアテにするしかない。そうすると、どうしても郵貯にメスを入れる必要がある。そうしないと民間にカネが流れてこないからだ。
C 郵政の民営化で郵貯の優遇性を撤廃させ、あぶり出された資金をシティバンクや新生銀行(リップルウッド)が拾うってシナリオなわけだ。
A ついでに郵便事業の足も引っ張る。つまり米国の対日戦略は、日本のマネー(郵貯)と国防の基盤となる通信(NTT)を押さえることにある。小泉や竹中の動きを見ていると、まるで、これらジャパン・ハンドラーたちの忠実な僕に思える。だからさっきの話に戻るけど、エスビーエスのことを我々は「ソフトバンク・スモール」と呼んでいるのさ。
B ソフトバンク・スモール?
A 第一ステージのソフトバンク株のように一年半で三〇倍にはならないまでも、今からでも数倍に化けるんじゃないかという意味でね。(後略)

 

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