国税当局は、2年におよぶ特定医療法人徳洲会との「戦い」にようやくケリをつけ、三月上旬までに傘下の医療機器リース会社など二社が、二〇○三年までの七年間に約一八億円の所得を隠していたと指摘、手口が悪質であることから重加算税の対象として、約九億円を追徴課税した。
この課税処分は東京国税局分だが、昨年は大阪国税局が徳洲会本体に約一六億円の申告漏れがあったと指摘している。関東信越国税局も税務調査しており、各国税局分をトータルすると、徳洲会は約四〇億円分の申告漏れを指摘されたことになる。
「結局、二年越しの税務調査となりました。国税庁をあげての調査となったのは、ある告発がきっかけでした。それに対して徳洲会は徹底抗戦の構えを見せて、自分のところの新聞(徳洲新聞)などで国税を批判、調査に非協力的だったところが国税当局を刺激した。でも、申告漏れの指摘にとどまり、刑事告発案件にならなかったのだから、『痛み分け』というところではないでしょうか」(全国紙国税担当記者)
「ある告発」とは、徳洲会の医療機器ビジネスに関与した神戸の不動産会社・富士の関係者がもたらしたものだ。
不動産業者と医療法人――医療機器ビジネスとしては「異色」の組み合わせだが、ここに今回、国税当局が目をつけたカラクリがある。富士は代表が、徳洲会を率いる徳田虎雄・衆議院議員(自由連合代表)の古くからの友人で、かつてのスポンサーだった。だが、大きく稼いだ不動産業者の例に漏れず、バブル崩壊で巨額負債を抱えていた。
ダンピングが可能な医療機器の納入に際し、赤字会社の富士を取引に関与させることで、差額を課税されることなく富士にプール、それを徳洲会にバックさせる、というのが徳洲会の戦略である。
「私もはじめて知ったんですが、高額医療機器は、値段があってないようなものなんですね。定価の六割、七割引きは当たり前という世界。そこにウチの会社(富士)が介在すると、わずかな手数料をウチに支払っただけで、残りを徳洲会は『裏ガネ』にすることができた」(富士関係者)(後略)