「『ハンシャ』という隠語がみずほ銀行の内部で使われているようですが、聞いたことはありませんか」――3月に入り、永田町ではみずほ銀行に関するこんな会話が聞かれた。ここで言う「ハンシャ」とは「反社会的勢力との取引」を指す。アングラ情報が最も早く伝わる永田町が、色めき立つのも無理からぬことだった。
発信源はどうやら一枚の怪文書だった。《正義を正したい「内部告発 みずほ工藤正頭取の辞任」》と銘打った差出人不明の怪文書には、こう記されていた。
《工藤頭取の辞任の真相は我々銀行員では考えられない銀行法に反する犯罪のためであります。1年以上前に海外送金されてきた日本円にして1000億円以上の米ドルを未だ顧客口座に入金していない。/顧客から毎日請求しているが、我々に対し脅迫じみた圧力をかけている。工藤頭取、「A」専務からたらい回す様支持がある。又法務課が○○事務所を使って顧客弁護士に圧力をかけている。この犯罪は全て旧第一勧銀グループ。》
この怪文書の真偽は定かではない。文面を素直に読めば、1000億円もの海外からの送金に対して、工藤正みずほ銀行頭取以下、みずほ銀行幹部が、マネーロンダリングの観点から、その資金の性格について疑問を投げかけ、一時的に送金を止めたと受け止められる。その意味では、正当な処理だったといっていい。しかし、一年以上もその処理をたな晒しにしていたのであれば問題であろう。
問題の本質はここに隠されている。「工藤頭取は問題が起こっても何もしない。リスクがあることは先送りする」(みずほ関係者)ということである。
一昨年の大規模システム障害のときもそうであった。マスコミ対策も含めすべての対応は前田晃伸みずほフィナンシャルグループ(FG)社長任せだった。最大の個人顧客を持ち、対応の前面に出るべき工藤頭取は、マスコミのインタビューを避け続けた。この時の感情のしこりが2月20日の異例のトップ人事に現れた。(後略)