記事(一部抜粋):2004年4月掲載

経 済

サラ金・カード・信販大再編

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
B 残ったプレーヤーは、メガバンクではみずほだし、消費者金融では武富士だ。こうした図式に基づいて、みずほが武富士を買収するのではないかという噂が一時流れたが。
A その可能性は低いと思う。みずほにはオリコという存在がある。MTFGとアコムの提携は、MTFGのリテールビジネスにアコムの審査、債務保証業務を活用するということだが、みずほの場合は、オリコを活用すれば、その用は足りる。
B 実際、みずほでは、UCカードに担わせていたみずほが実行した個人ローンの保証業務を、オリコに移管する。保証という言葉の裏には、審査と回収がある。
C とすれば、やはり、噂が立った「みずほ・武富士」はあり得ないという結論になるね。そこまでが今回のMTFG・アコムの波及効果ということか。
A いや、それだけでは収まらないだろう。もっと大きな影響がじわじわと出てくるような気がする。その意味で、今回の出来事のマグニチュードがかなり高いということになるだろう。
B 同感だ。アコムなどの企業を消費者金融と呼ぶが、クレジットカード会社、信販などのキャッシングも一種の消費者金融だ。だからこそ、アコムなどは消費者金融専業と呼ばれている。つまり、専業会社だけではなく消費者金融を業としているクレジットカード会社や信販会社なども含んだ大きな変化が始まる、という話になっていくだろう。
A たとえば、今回の資本提携についても、それじゃあ、MTFG系列のクレジットカード会社であるDCカードは今後どうなっていくのかという問題がある。
C そういえば、東京三菱の個人ローンの保証業務は従来、DCカードがやってきたんだよね。それがアコムに移管されてしまうのだから、DCカードとすれば仕事を奪われる形になる。
A そういうこと。DCカードがそれでも有力カード会社として、これからも成長していくためには、ここで一気に合併という発想が出てきてもおかしくない。その場合、有力な相手はジャックスだろう。ジャックスは三菱親密企業のひとつだ。つまり、「日本信販・UFJカード」の三菱版ということだ。そこに、アコムのクレジットカード部門が加わるかどうか。
B 銀行のリテールバンキングという場合、ファクターは顧客のアクセスポイントとカードだ。カードはキャッシュカードとクレジットカード。これらは一体カード化していく。問題は、どのクレジットカード会社のカードにキャッシュカード機能がつくのかということ。裏返すと、どの銀行のキャッシュカードにどのカード会社のクレジット機能が付くのかということだ。「一体カード」に乗れないカード会社は辛い。その分、利便性が劣るということになるからだ。
C なるほど、面白くなってきたね。まあ、銀行としては、MTFGが唯一の勝ち組であり、そのあとをみずほが追う展開になってきた。しかも地価が底を打つと、銀行業は規模の利益がモノをいう局面に入っていく。みずほは規模の有利性を生かせるようになる。ところが、各メガバンクが指向しているリテールバンキングでは、必ずしも、MTFGとみずほが強いわけではない。
A そう。カード会社まで含めて考えると、三井住友には三井住友ビザカードという有力なカード会社があるし、UFJには日本信販などがある。また、みずほにはオリコのほかに、親密先としてクレディセゾンなどもある。
B そうみていくと、リテールバンキングの構成要素については、MTFGは劣勢な立場にあった。そこで今回、一発逆転の動きに出たということなのかな。しかも、これで終わりとはならないような話であって、むしろ、レースはいま始まったばかりだと。(後略)

 

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