記事(一部抜粋):2004年2月掲載

経 済

早くも始まった「足利銀行」争奪戦

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
A ところで、足利は今後、再建に向けて動きだすわけだが、最終的には買い手探しという話になっていくと思う。どういう展開が予想されるだろう。第一に考えることは、再建できるかどうかだが。
B 結論を言ってしまえば、これまでの銀行再建に比べると、きわめて再建はスムーズにいくだろうね。
C 同感だ。りそなの場合とは大違いだと思うよ。
A 三人とも同意見ということか(笑)。ご存じのように、足利の業務純益はこのところ拡大傾向にあった。しかも、繰延税金資産が全額否認されたことで、所得は課税所得とはならない。配当負担もない。利益水準が急激に上がっていくことは明らかだ。あっと驚くような収益力の回復となるだろう。
B 新頭取となった元横浜銀行の池田憲人氏の評価も瞬く間に上がるはずだ。おそらく、それが分かっていたから、池田氏も引き受けたのだろう。池田氏は「絶大な県内シェアにあぐらをかいて、銀行としてのビジネスをしてこなかった」と、これまでの足利を批判したけど、こうした強気の発言も急速な回復がまちがいないという確信をもってるからできることだ。
C となると、足利の買い手は大勢出てくるということになる。すでに、モルガン・スタンレーなど外資勢が活発に動いているという噂もあるしね。
A ある外資系投資銀行は、隣県の有力地銀である群馬銀行、常陽銀行などにも出向いて、足利を買いたいのでよろしくと挨拶しているという。なかには、協力してくれたら足利の優良企業を譲ってもいいとまで言っているという話も聞いた。
B そういう話をするところは、おそらく不良債権売却ビジネスで、引当金として積んだ公的資金の獲得を狙っているのだろう。
C しかし、足利買収に動くのは外資だけとは限らない。それこそ、隣県の地銀やメガバンクなどの参戦も十分予想される。有力視されるのは、やはり、東京三菱だろう。足利は元々、三菱の親密地銀のひとつだった。もし、東京三菱が手を上げれば、それで決まりという感じがするけどね。
A 金融庁としては、国内勢で決めたいだろう。外資だとまた世間から「外資優遇」という批判を浴びかねないし、もっと重要なことは、それでは銀行数が減らない。「オーバーバンキングの是正」を旗印に銀行の頭数を減らしたいという願望が強いから、国内銀行に買わせたいのではないか。
B できれば、足利を材料に関東圏の地銀の再編をやりたいと思っているフシがある。
C りそなも巻き込んで、関東圏の大型地銀をつくるとかね。(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】