(前略)
いずれにしても、今後の最大の注目点は、武井会長の関与の有無であり、また、盗聴以外に捜査の矛先が向かうのかどうかだ。
武井会長の直接的な関与については、決定的な物証がないとの情報もある。「基本的に盗聴は、自分と武井の二人だけしか知らないこと。録音テープは会長室で、二人きりで聴いた」と中川被告も証言していることから、武井会長の指示を聴いた第三者がいる可能性は低いとみられる。
ただ今回、武井腹心の小瀧容疑者が逮捕され、調べに対し、かつて盗聴を行ったことを認める(今回の逮捕容疑とは別)供述をしていることから、予断を許さない状況には変わりない。
また、中川被告が新宿警察署の留置場で本誌に語ったところによると、武井会長から受ける様々な指示については、テープに録音したものがいくつかあり、それは警視庁にすべて押収されたという。その中には「盗聴命令」を直接示すものはなかった模様だが、こうしたテープが本当に押収されているとするならば、中川被告が武井会長の特命を受けて様々な対外裏工作を担ってきたという包括的な事実が少なくとも裏付けるだろう。
武富士においては、武井会長の指示は絶対であり、また、実に細かい業務にまで直接指示が下されていたと、本誌が取材した武富士関係者は口を揃えていう。
中川被告が留置場内で記録してきた日記にも、こんな記述がある。なおイニシャルの人物はすべて武富士関係者である。
《午前一〇時過ぎ、AとBが接見におとずれてくれた。平日なので無理させたかと思い、こちらから時間大丈夫かと聞いた。(略)「Cが警察で書類をみせられ、印鑑が違っていた、偽造したと言わんばかりの事を言っているみたいで、武井はそれを聞いて嬉々としていたらしい。DとかEさんも呼ばれて、毎日会議をやっているみたいだ(略)」「何もかも全て警察に話した方が良いよ」 「全て聞かれている事については正直に答えているし、全ての資料が押収されている」
Bが強い口調で「誰が印鑑なんて偽造出来るもんか。そんなことは誰でも知っているのではないか、バカじゃない」。Aが「そんな根性のある奴はいないよ」
全て中川個人がやった事にしようとしている、とまでは言わないが、そのような会議を毎日やっている様子が手に取るように判る。
「藤川さん(武富士元渉外部長、後述=編集部注)の権利証の時だってそうだ。武井の印鑑がなく出る物など一つもない」……》(八月△日)(後略)