記事(一部抜粋):2002年6月掲載

社会・文化

国税の前に頭を垂れた芸能界 

今年の長者番付、芸能人が上位に登場した理由

 国税庁関係者がほくそ笑んでいる。
 国税庁が5月16日に発表した「長者番付」。全国上位100人のなかに、4人の芸能人が入っていた。「平成の歌姫対決」と言われた浜崎あゆみと宇多田ヒカルは、浜崎が納税額約4億2000万円で三九位、宇多田が約3億2000万円を納税して76位にそれぞれランクインした。ほかには「Bz(ビーズ)」のメンバーの稲葉浩志が58位、松本孝弘が95位に入っていた。
「歌手」が、前年のゼロから一挙に四人も長者番付入りしたことについて、『読売新聞』は《景気低迷で業績の振るわない業種が多いなか、CDの売り上げなどで安定収益を出しており、不況に強い音楽業界を印象づけた》と解説。『日本経済新聞』は、国税関係者の「景気にあまり左右されない若者たちの支持を受けているのだろう」というコメントを紹介している。
 まるで自然現象のように芸能人が儲かったような印象だが、国税当局がここ数年、芸能界を「親の仇」のように付け狙い、芸能プロダクションや芸能人に対する税務調査と査察を繰り返し、彼らを恐怖に打ち震わせたことを考えれば、「不況だから芸能界が儲かった」といった単純な話ではない。発表された長者番付は、芸能界の税金面での「粛清」に乗り出した国税当局が、それに成功した証なのである。
 象徴するのが小室哲哉である。優れた音楽プロデューサーにして歌手の小室は、納税額約1億8400万円と公表された。推定年収は約五億円。この全国有数の「長者」である小室が、昨年まではいっさい納税していなかった。居住する米国での納税を選択していたからである。実は、五年前からの小室のこの選択が、国税当局の「芸能界掃討作戦」に踏み切らせたきっかけである。(後略)

 

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