記事(一部抜粋):2002年5月掲載

政 治

復活した金融庁「手心」行政

ペイオフ解禁で一転、中小金融機関の保護に走る

「検査部局がまとめた検査結果に、手心が加えられるケースが、最近増えている」
 金融庁の検査の現場から、こんな声が漏れ始めている。4月1日のペイオフ解禁までに、不良金融機関を一掃すると臨んだ金融庁は、ここ1年、再編分を含めると100を超える中小金融機関の淘汰を進めてきた。この中には「清水の舞台から飛び降りる気持ちで決断した」(検査局)という、永代信用組合の“職権破綻”も含まれている。
 政治的に破綻処理は難しいと思われていた民族系金融機関にまで再編・淘汰の網を広げた金融庁にとって、ペイオフ解禁は、懸案だったオーバーバンキング解消の格好の大義名分だった。それだけに柳沢伯夫・金融担当相は四月以降の「安全宣言」にこだわった。かつて中小金融機関への手心発言で更迭された越智通雄金融再生委員長(当時)とは違うんだ、というアピールにもなる。
 しかし、それもこれも「安全宣言」まで。ペイオフ解禁後は逆に、予期せぬ金融機関の破綻が生じペイオフが実際に行われたら、柳沢の責任問題に発展しかねない。つまり状況は一転し、金融庁は金融機関の保護に回ることになる。冒頭の検査部局の声は、そうした変化を如実に表している。(後略)

 

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