記事(一部抜粋):2002年1月掲載

経 済

矛盾だらけの金融行政 政治家も当事者能力なし

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
A 無配になると、国有化という話につながってくる。国有化は実質的に倒産だ。そうすると、そのときの預金はどう扱われるのか。「ペイオフ関連の預金預け替えは山を越した」などと当局者たちは言っているが、笑止千万だ。事態が変われば、預金解約は次のステージへと移る。国有化の可能性がある銀行に一円だって預金を置いとくのは嫌だろうから、預金者は解約に動く。それが預金移動の第二幕であって、当然、第二幕は銀行の経営に大きな影響を及ぼすにちがいない。
B では、国有化措置はあるのかどうか。その前提として考えなければならないのは公的資金の再注入があるかどうかだ。柳沢大臣は案の定、「再注入の必要性はない」と繰り返している。なぜ、そう言い続けているのか。実際に再注入が必要か必要ではないかの以前の問題として、再注入すると、実質的には銀行は公的な管理下に入ることとなるからだ。資本金のなかに占める公的資金のウェートの上昇は、国が議決権のある普通株を保有するか、それとも議決権のない優先株を持ち続けるかというような建前論など吹き飛ばしてしまう。そうなったうえに、建前論として「公的管理ではない」と言っても、株式市場ではその銀行の株式がいよいよ売り叩かれるだろう。それで一巻の終わりだね。
C つまり、中途半端な対応はありえないということか。確かに、プロセスとしてはそうならざるをえないだろうね。しかも、再注入に踏み切った場合、一部の大手銀行だけで済むかどうか。市場は銀行をまとめて見ている。「大手銀行クラス」といった見方だ。再注入を実施すなら、全銀行一挙にやらざる得ないのではないか。
A しかも、過去に二度行っている資本注入のうえに、さらに再々注入するわけだから、銀行は公的資金の返済負担、配当負担がさらに重くなる。すでに無配かどうかと言われているほどだから、象徴的にいえば、銀行は過剰債務企業になってしまう。
B うまいことを言うね。そのうえ、株価が下がって、格付けが下がれば、銀行は金融庁の特別検査の対象案件になってしまう(笑)。それは冗談としても、山のように公的資金を積まれても、それだけでは問題は解決しないわけだね。(後略)

 

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