記事(一部抜粋):2001年8月掲載

経 済

企業研究日本テレコム

内憂外患、右往左往する経営陣

 日本テレコムに黄信号が灯っている。携帯電話世界最大手の英ボーダフォングループが四五%の株式を保有する筆頭株主となり、経営の自主性が揺らいでいるうえ、国内通信市場のシェアを色分けするマイライン(優先接続)制度でも、登録顧客数が一〇%にも満たない惨憺たる状況に陥っている。KDDIとともにNTT対抗勢力の一翼を担ってきた日本テレコムに、もはや昔日の面影はない。“ハンター”の異名を持つボーダフォンの世界戦略に組み込まれ、固定電話網の売却話さえ聞こえてくる。ボーダフォンの日本法人として生き残りの道を模索する日本テレコムに、未来は開かれているのだろうか。
(中略)
 そこで浮上しているのが、携帯電話事業を主体とした“日本テレコム切り捨て説”だ。ボーダフォンのクリス・ジェント社長は「固定電話の時代は終わった」と語っているだけに信憑性は高い。ボーダフォンが筆頭株主となることが決まったときにも、日本テレコムの固定電話網売却の噂が市場関係者の間でまことしやかに流れたほどだ。
 坂田会長は、固定網売却の噂を、「移動通信の通信速度とコストは、まだ固定に届いていない。固定と移動を分離すべきではないと、ジェント社長に説明し理解してもらった」と言って一笑に付すが、携帯電話の世界制覇を目指すジェント社長が 「はい、そうですか」と簡単に引き下がるとは思えない。坂田会長の見通しは楽観的に過ぎよう。
 英国で行われたボーダフォンの決算発表の席で、日本テレコムの株式をさらに買い増して買収する考えがないかを聞かれたジェント社長は 「今は買収すべき時期ではない」と語ったが、時期がくれば完全子会社化もあり得るとの考えを示唆したものと受け止められている。
 それは日本テレコムの事業に魅力を感じてというより、日本テレコムがJ−フォンの事業展開に邪魔な存在になるなら資本の論理で意のままに扱ってやる、という意志表示だろう。いずれにしても、ボーダフォンにとって必要なのはJ−フォンであって、日本テレコムではないことだけは確かだ。(後略)

 

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