金融ジャーナリスト匿名座談会
(前略)
B 一説によると、金融庁が呼びかけて、金融業界や経済団体を参加させて検討している私的整理のガイドライン作りも、当初からダイエーを想定しているらしい。「いま検討されているガイドラインの中身からは、私的整理の対象はダイエーくらいしか思い当たらない」という言い方をする銀行関係者もいる。
A 仮に今年度中にダイエーが処理されると想定すると、確かに話の流れは合う。ダイエーは来年二月決算だ。その直前に、三和、東海が合併し、合併差益という処理バッファーを確保する。そして私的整理のガイドラインに基づいてダイエーに対応する。私的整理だから、ダイエーに品物を納入している業者には連鎖倒産は発生しない。それで一件落着ということかな。
C しかし、先ほどの資本準備金の問題と同じで、うまくいくかどうかは微妙だ。株価が大暴落すれば、すべての前提は狂ってしまう。
A たしかにその可能性はある。株価は敏感に反応するからね。もっとも、反応の仕方は二通りある。暴落と上昇だ。市場関係者が「アク抜け材料」などと囃したてれば、後者になるかもしれない。
B しかし、ダイエーが私的整理の候補者だとはいっても、実際にそうなるとは限らない。銀行団による債権放棄の足並みが乱れれば私的整理案は御破算だ。株価が下がって、経営に余力が乏しくなると、足並みの乱れが生じやすくなる。
C ダイエーグループに対する融資額をみると、三和が四〇〇〇億円強、東海、富士が三八〇〇億円台で、三井住友が三八〇〇億円弱となっている。三和、東海が合併して誕生する新銀行は八〇〇〇億円という大変な融資額となるわけだが、不気味なのは新生銀行だ。一三四〇億円の融資額がある。
B 例の瑕疵担保条項の問題だよね。新生銀行が再び変な動き方をすると、すべてのスキームが壊れてしまう。新生銀行は銀行と名前は付いているものの、銀行らしから動きをするから、予断を許さない。(後略)