記事(一部抜粋):2001年6月掲載

経 済

待ったなしの「地銀」処理迫るタイムリミット、問題先送りの懸念も

金融ジャーナリスト匿名座談会

(前略)
A 地銀の再編問題も未解決のままだ。こちらは公的資金投入の期限が2000年度末となっている。早いところ片付けないと時間切れになりかねない。
B 問題案件は東北、北関東、北陸、九州など全国各地に散らばっている。多くは第二地銀だが、地銀もないわけではない。果たして期限内に処理できるかどうか。
C 第二地銀は、ペイオフ対応として1000万円を超える預金を業界内の他の銀行に移し変えることを顧客に勧めるという方法を考えたりしている。しかし、これは苦し紛れもいいところだ。なぜなら、「1000万円を超える預金は、他の銀行に移し変えてください」と言った瞬間に、「私の銀行は安心できません」と告白したことになるからだ。
A やれたとしても融資でがんじがらめに縛った顧客だけだ。融資の見返りとして預金をとる拘束預金の慣行は依然として残っている。そうした顧客は、全額解約したくとも、融資の引き上げを食らったら一巻の終わりだから、結局は預金を動かせない。要するに、銀行が完全に主導権を握っているような顧客しか、預金分散の勧誘には乗らない。要は中小企業対策であって、そんなやり方をすれば、しがらみのない個人預金者は逃げるに決まっている。
B しかし、このまま何も対応しないというわけにもいかないだろう。もちろん、2000年の前半戦に、すべての問題金融機関の処理を終えることができれば話は別だけれど。
C ここへきて株価が一段安となっている。保有株の含みがボーダーラインすれすれだった銀行も、この株安でアウトになりかねない。しかも、株安にはさまざまな理由があるが、その1つとして銀行による保有株式の売却がある。これは、株式持合いの解消売りなどと簡単に説明されているけど、実際には、公的資金の注入を受けた銀行が返済資金の確保のために売却しているという側面がある。銀行は自分で自分の首を締めているわけだ。もはや合理性も何もあったものではない。
A そこで大手銀行の問題だ。すでにこの座談会で話し合ってきたことだけど、中央三井信託と大和銀行が心配だね。
B 両行とも保有株式の採算分岐ラインが高いので、含み損は膨らむ一方だ。はたして二〇〇〇年度決算を凌げるかどうか。1月以降も株価の下落が続けば、この2つの銀行がそのままの形で存続できるかどうかという問題が現実化する。
C 中央三井信託の場合、中央信託が拓銀の本州部分を吸収し、そのうえで中央信託と三井信託が合併するいう二段構えの再編を経験している。それでもダメということなれば、これまで再編の度に公的資金を注入してきたことは、いったい何だったのかという問題になる。つまり、公的資金の注入が果たして妥当だったのかということだ(後略)

 

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