記事(一部抜粋):2001年5月掲載

社会・文化

土地神話を象徴するバブルビルついに売却

10年間塩漬けされた「イ・アイ・イ」高橋治則被告の因縁の物件

 日本有数のオフィス街である港区虎の門三丁目の桜田通り沿いに、グレーの外壁と太い支柱が重厚さを感じさせる一六階建てのビルが建っている。「虎の門三丁目ビル」と名称は素っ気ないが、最近まで世界有数の金融機関であるドイツ銀行が入居、ビルに“重み”を加えていた。
 政治経済から芸術文化に至るまで、時代を象徴する“作品”があるとするならば、「虎の門三丁目ビル」は、バブル期における土地神話のもとでの不動産担保主義を象徴する物件であるとともに、その変遷過程は日本経済の「負の歴史」を体現するものである。
 浄土宗の名刹「天徳寺」の所有地が、「元祖地上げ屋」と言われた八大コーポレーションの川口勝弘社長(故人)の手を経て、都市企画設計という不動産開発会社に売却されたのは、バブル経済の“勃興期”ともいえる一九八四年三月。この頃の優良物件の例にもれず、所有権は川崎定徳系列の日康産業、住宅信販、アバンアソシエイツと次々に移ったうえで、九一年七月、イ・アイ・イ・インターナショナルに移転する。
 イ・アイ・イグループと言えば、「長銀(旧日本長期信用銀行)を破綻に追い込んだ戦犯のひとり」と言われる高橋治則被告(二信組事件で公判中)が率いていた会社である。そして、高橋被告にとって「虎の門三丁目ビル」は、国内における「イ・アイ・イ帝国」の拠点となるはずのものだった。(後略)

 

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