不動産の流動化が本格化
不動産業者の会合などで、このところ必ず話題になるのが『日経新聞』を始めとする経済マスコミ、証券アナリストや経済学者、そして政治家といった人間たちの“感度”の鈍さである。
「われわれの実感では、土地は上がっているんです。都心商業地では急騰といっていい取引事例もある。ところが、経済に目配りしているはずの人たちが、誰もこのことを語らないし報じない。もし知らなかったとしたら怠慢。そして、公示価格が下がり続けているから、地価が動いていないと本気で思っているとしたら、とんでもない間違いです」(不動産会社社長)
もっとも不動産業界では今、極端な二極化が起こっており、商業用オフィスや超高級マンションの相場が急騰しているのは、都内でも千代田、中央、港、渋谷など特定の区に集中している。
「渋谷の表参道では二〜三年前は、坪当たり一〇〇〇万円だったが、最近は三〇〇〇万円内外が取引事例になっている。渋谷駅の近辺で、今年に入って五〇〇坪近くのまとまった土地が出て、いくらの値がつくだろうと注目していたら、坪当たり二四〇〇万円と聞いて、たまげたことがある」(不動産業者)
この景気の良さがウソのように住宅地の地価は冷え込んでいる。地方都市も同様。しかし、だからといって日本全体の地価の底が見えない、といった状況ではない。昭和五〇年代後半のバブル前、地価は都心商業地から徐々に高騰、二三区全域に広がり、地方都市を巻き込み、さらには住宅地全体を押し上げる形で一直線に上がっていった。(後略)