前月号で国家試験を行って技術的な能力水準を「認定」する公益法人を紹介したが、今回はその逆の、公益法人が実施する「資格」などを国が「認定」するケースを取り上げてみよう。ここでは国の行き過ぎた権威付け、“過剰関与”ぶりが明らかになる。
文部科学省(旧・文部省)所管の財団法人「日本英語検定協会」は、「英検」(実用英語技能検定)の試験実施機関として知られる。
一九六一年、社会教育審議会が文部大臣に対し、「青少年および成人に学習目標を与え、意欲を高める意味で技能検定が必要である」旨の答申が出されたことが発端となった。これに呼応する形で、六三年四月に当時「豆タン」の発行者で知られた赤尾好夫・旺文社社長が私財を投じて同財団を設立している。翌年に東京オリンピックを控え、国民の間に国際化への熱意がみなぎっていた。設立直後の同年八月には、第一回「英検」1級、2級、3級が全国四九都市で実施され、約三万八〇〇〇人が受験している。
現在は副会長などに元文部事務次官が天下っているが、財団の設立当初は役員に文部省OBはいなかった。
「英検」は「実用英語」(プラクティカル・イングリッシュ)の技能が基本だから、「特に口頭で表現できること」に能力審査の力点が置かれている。このため、発足当初からリスニングテストと面接形式によるスピーキングテスト(1級から3級)を実施し、「読む・書く・聞く・話す」の四技術について測定している。コミュニケーションのできる英語を重視するため、「学校英語」の読み・書き偏重に比べ、はるかにバランスがとれている。例えば「コミュニケーションを積極的に図ろうとする態度」を「アティチュード」として評価する。(後略)