記事(一部抜粋):2001年3月掲載

経 済

【企業研究】日興証券

逃れられないシティの呪縛

名実ともに巨大外資の傘下に
 昨年秋から日興証券の派手なテレビCMが目に付くようになった。有名俳優を使い、ストーリー仕立てにしたことで視聴者の関心も引いたことだろう。極めつけは金子昌資社長本人が登場するバージョン。金融機関のトップがこうした形で自社CMに出演するのは前代未聞だ。
 市況がよくて、足元の業績が好調ならば社長のパフォーマンスもご愛嬌だが、現状はまったく逆だ。昨年四月まではITブームの追い風に乗って平均株価が久々に二万円を突破したが、それ以降は一本調子の下げ相場。二月八日には二年半ぶりに一万三〇〇〇円を割り込んで、バブル崩壊後の最安値(九八年一〇月、一万二八七九円)に肉薄した。株の含み益が枯渇した銀行が決算不能に陥る三月危機説が現実味を帯びて囁かれている異常事態。
 個人投資家もこの一年はほとんどが大損している勘定だ。それを今さら「リテールの日興へ」と言われても、投資家は戸惑うばかりだろう。
 証券会社の収益力ほど脆弱で不安定なものはない。先に発表された二〇〇一年三月期の第3四半期(二〇〇〇年一〇〜一二月)の決算(連結ベース)で、日興の営業収益は前年同期比四五%減の八二二億円。経常利益は実に二〇分の一の二八億円に激減した。相場の低迷で委託手数料収入が大幅に減ったことや、自己売買部門のトレーディング益が落ち込んだことが原因だ。もちろん減収減益は他社も同様。野村は経常利益で八七%の減少、大和に至っては赤字転落である。
 二〇〇〇年三月期の決算では、好況相場の恩恵を受けて各社ともバブル崩壊後の最高益を記録した。それが一年もたたないうちにこの有り様である。金融ビッグバンで証券会社は変わったと言われるが、所詮は手数料などのブローカー業務に多くを依存している。相場が良ければ儲かり、ダメなら儲からないという収益構造は古い株屋体質そのものだ。(後略)

 

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