政府は二月の月例経済報告で、景気の現状について「改善のテンポは、より緩やかになっている」と基調判断を昨年一一月以来、三カ月ぶりに下方修正した。だが、スーパー店長、タクシー運転手などからのアンケートに基づく「景気ウォッチャー調査」(内閣府)によると、昨年末から景気は急速に悪化しており、なお「自律的回復に向けた動きは続いている」と判断している政府との景況感には大きな隔たりがある。
景気のとらえ方に、なぜこうも政府と民間に食い違いが生じるのだろうか。官僚の当たり障りのない判断をそのまま鵜呑みにした政府発表が、現実とは相当ズレていると見るのが正しいのではないか。過去の政府の景気判断を振り返ってみても、基調判断を下方修正したときには、景気はすでに下降していたケースがみられるからだ。
経済の総合判断の拠り所となるGDP(国内総生産)の動向はどうだろうか。政府の「自律的回復に向けた動きは続いている」とは裏腹に、物価の下落を調整しない市場価格ベースのGDPは、景気が回復しているといわれている九九年七−九月期以降の5四半期のうち、なんと4四半期が前期比マイナスなのである。もちろん、過去の景気回復局面ではあり得ないし、下降局面でさえもこれほどGDPがマイナスに陥ることはなかった。
今後、経済成長率はいっそう低下し、日本経済は弱気心理で覆われることになろう。企業は不良資産の処理に追われ、賃金の増額に応えることはできない。二〇〇一年度の賃上げも伸びは見込めず、家計の購買力は増えないであろう。不動産価格の暴落で、マンションなどは買い値の半値程度に減価し、家計も多額の不良資産を抱えているはずだ。(後略)